譚海 卷之九 遠州海邊天狗火の事(フライング公開)
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。特異的に句読点・記号の変更・追加と、読みを加え、段落も成形した。]
○遠州海邊(うみべ)には、天狗火といふもの有(あり)。
夏月、海上邊(あたり)に火、有(あり)、燈(ともしび)のごとく見ゆ。
夫(それ)を、海邊にありて、
「をい、をい、」
と、聲を、たてて呼(よぶ)ときは、其火、暫時に波をわたり、其人の前に飛來(とびきた)る。
不思議成(なる)事なり。
此火に逢ふ者は、多く、病惱(びやうなう)するゆゑ、土人、恐れて、あへて近付(ちかづか)ずといふ。
[やぶちゃん注:これ、一応、冒頭注の理由で、電子化したのだが、これは同じ「譚海」の「卷之二 遠州海木幷天狗火の事」の後半分と、あまり変わらない。この先行するもので書いたことを、津村は忘れて、うっかり同じ内容(但し、こちらの方が少しだけ詳しい)を記してしまったと言うべきであろう。]
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