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2023/12/04

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「騙された狐」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 なお、本篇は非常に見知らぬ漢語・熟語が多用されており、甚だ躓くので、頭にきて、あらかたを文中で各個撃滅した。五月蠅いと感じる方は、どうぞ、太字部を無視して読まれたい。しかし、凡そ私の注がないと、狐に騙されるぐらい、キツい文章で御座るぞ。

 

 騙された狐【だまされたきつね】 〔北国奇談巡杖記巻五〕同国<越前>坂北郡三国<福井県坂井市三国町>の入江は、人王二十七代継体天皇いまだ大跡辺《をほあとべ》の王子と申せし頃、ましましける旧地なり。今は北国第一の大湊にして、娼家粉頭《ふんとう》[やぶちゃん注:妓女。]店《みせ》軒《のき》を並べて繁花たり。爰に出村《でむら》[やぶちゃん注:本村(ほんそん:ここでは「三国村」)から分かれた飛び地などにある分村(ぶんそん)のこと。]と続《つづき》て私科子《しかし》[やぶちゃん注:私娼を意味する漢語。]、遊君《いうくん》[やぶちゃん注:遊女。]、粉黛を粧ふ。中に黒丸権四郎といふ、しばくしば角力《すまひ》に名を振ひたる若ものありけるが、夜行大酒を好む。あるとき細呂木《ほそろぎ》といへる駅に用要《ようえう》[やぶちゃん注:大事な用事。]ありて、昼より出けるに、用談に日を暮し、既に夜半におよびし故、人々とゞめしかど、かの不敵なるものから、山路《やまぢ》茂林《もりん》不管《かかはらず》犬狼《けんらう》の患《うれへ》も知らざれば、闇夜に馬撾打《たたきうち》てほゝゑみかへりしが、半道《はんみち》[やぶちゃん注:細呂木から自宅までの距離の半分の意でとっておく。]あまり過ぎつらんとおぼしきころ、こなたの松原に鬼火をてらし、斑毛(まだらげ)の狐、薛茘(まさきのかづら)[やぶちゃん注:後に示す活字本では『薜茘』であり、この「薜」は「薛」とは全くの別字である。宵曲の転写ミス或いは誤植である。この「薜茘」は「大崖爬」とも書き、歴史的仮名遣では「おほいたび」と読み、小学館「日本国語大辞典」によれば、「おおいたびかずら(大崖爬葛)」の略で、『クワ科の常緑低木。本州中・南部、四国、九州の山地や石崖などに生える。茎は灰褐色で非常に強く、這い伸びる。葉は革質で楕円形。花はイチジクに似た花嚢(かのう)の中に密生し、実は熟して黒紫色となる』とし、「こずた」「いぬたぼ」「いたびかずら」の異名を掲げる。現行では、バラ目クワ科イチジク連イチジク属オオイタビ Ficus pumila に比定してよいか。当該ウィキを参照されたいが、そこには『日本の千葉県以西の太平洋側から南西諸島にかけて分布する』。『人家の壁や石垣、ブロック塀、樹木を覆って茂る』とあるが、他のネット記載を見ると、房総半島以西の日本各地に分布する常緑蔓性植物とするので、ロケーションに問題はないだろう。]を身にまとひ、ひとり躍《をどり》を催しゐける。黒丸もあまりの怪しさに、口を箍(たがね)て[やぶちゃん注:ぎゅっと閉じて。]通りけるに、黒丸を見るより二扮《にふん》[やぶちゃん注:別なものに姿を変えることらしい。]して、若衆と変ず。黒丸もこゝろにそれとしりながら、態《わざ》と何の様子も知らざるけしきにて過行きけるに、かの若衆脂顔[やぶちゃん注:「しがん」と音読みしておく。「顔を白粉(おしろい)で塗る」ことか。であれば、「おしろい」と訓じてもよいだろう。]して、申々《まうしまうし》と声かけたり。もとより強気の権四郎なれば、踏とゞまりて、何事候といふに、我は大聖寺《だいしやうじ》のさる町人の忰《せがれ》なるが、三国通ひに金銭を弃《す》てしものなり、何卒親元まで送りとゞけたまはれといふ。黒丸いふやう、これ安きことなり、しかし余ほどの道程《みちのり》なれば、この先の茶屋にて支度して送りとゞくべしといふ。さらば我も連れてともに酒にてもたうべしといふに、うなづき村端の茶店をたゝき起して、黒丸いふやう、三国通ひのさる有徳《うとく》の人の嫡子なり、この御客酒一献くみたきよし、はやく調ひ出すべしといふ。亭主心得顔にて、先づ鯉の薄味噌、鮭の鱠《なます》末茸のあつものに、摺柚《すりゆず》よ、酒滲《の》[やぶちゃん注:勝手な当て訓をしておいた。]めよといふまゝに、家内《かない》[やぶちゃん注:妻。]婢《はしため》も呼起《よびおこ》し、一間に請じて若衆を伴ひ、黒丸とふたり、数盃《すはい》を別盃にかたむけ、珍味飽くまゝに喰ひつゝ時分は爰(ここ)ぞと黒丸、勝手に逃足《にげあし》して、我は少々用事ありて先に行くべし、払ひは御客よりたまはるべしとて、我屋をさして逸足《いちあし》にたちかへりぬ。跡に若衆ひとり黒丸を呼ぶに、亭主立出で、それは先刻御帰り候ひぬ、これこれの雑用代金壱歩七百文たまはるべしといふに、斑狐も渠《かれ》に脅やかされて、少間《しばらく》愕《おどろ》くといへども、もとより吼噦(こんくわい)[やぶちゃん注:本来は狐の鳴き声「こんこん」のオノマトペイアであるが、転じて「狐」の意。]のことなれば、九尾を振《ふり》て走りまはるを、亭主怒りて棒を捻《ねぢ》りて、追へども追へども続《つづ》かばこそ、そのうちに木綿告(ゆふつげ)の鶏《とり》[やぶちゃん注:「木綿付鳥(ゆふつけどり)」が「ゆうつげどり」と発音されるようになり、「夕べを告げる鳥」と解されて生じた語。この場合は「夕べを告げる鳥」ではなく、単に夜明けを告げる鷄(にわとり)を指す。衒学趣味の筆者の風流のやり過ぎで、かえって話が躓く。]うたひ、山かづら引明《ひきあ》けて、口をしくも八顚九倒《はつてんきうたう》し、泣々亭主はねむたげに眶《まぶち》[やぶちゃん注:「瞼(まぶた)」に同じ。]かゝへて帰りけるこそ、よくよくの災《わざあひ》なり。只黒丸ひとり甘昧を味ひ、そのうへ哆《ほしいまま》[やぶちゃん注:この漢字はネットで調べても、ピンとくる意味が見当たらなかったので、所持する大修館書店「廣漢和辭典」を引いたところ、以上の漢語の意味があったので採用した。]しもあるべきか。狐を嬲(なぶ)りしは希代《けだい》の発明、あはれにも亦をかしき事になん侍る。

[やぶちゃん注:「北国奇談巡杖記」加賀の俳人鳥翠台北茎(ちょうすいだい ほっけい)著になる越前から越後を対象とした紀行見聞集。かの伴蒿蹊が序と校閲も担当しており、文化三(一八〇六)年十一月の書肆の跋がある(刊行は翌年)。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』第二期第九巻(昭和四(一九二九)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで、正字活字で読める。標題は『○黑丸權四郞哆斑狐』(「くろまるげんしらう、まだらぎつねをたらす」か。この場合の「たらす」は「上手く取り扱って騙す」の意)。しかし、この文章、異様に見かけない漢語を多用しており、衒学的で好きになれない。

「同国」「越前」「坂北郡三国」「福井県坂井市三国町」「の入江」「東尋坊」の周辺(グーグル・マップ・データ)。

「継体天皇いまだ大跡辺の王子と申せし頃」継体天皇(允恭天皇三九(四五〇)年?~継体天皇二五(五三一)年?/在位:継体天皇元(五〇七)年?~没年)の元の名は「をほどのわう」。漢字では「男大迹王」・「乎富等王」「大跡邊王」などを宛てる。当該ウィキによれば、『応神天皇』五『世の来孫』(玄孫の子。当該人物から五代の後の子孫を言う)『であり』、「日本書紀」の『記事では越前国』、「古事記」の『記事では近江国を治めていた』とあるので、本文の治国地には問題ない。『本来は皇位を継ぐ立場ではなかったが、四従兄弟にあたる第』二十五『代武烈天皇が』、『後嗣を残さずして崩御したため、大伴金村』(おおとものかなむら)『や物部麁鹿火』(もののべのあらかひ)『などの推戴を受けて即位したとしている。先帝とは』四『親等以上離れて』『いる』とあり、『太平洋戦争後、天皇研究に関するタブーが解かれると、応神天皇』五『世というその特異な出自と、即位に至るまでの異例の経緯が議論の対象になった。その中で、ヤマト王権とは無関係な地方豪族が実力で大王位を簒奪し、現皇室にまで連なる新王朝を創始したとする「王朝交替説」がさかんに唱えられるようになった。一方で、傍系の王族(皇族)の出身という『記紀』の記述と一致する説もあり、それまでの大王家との血縁関係については現在も議論がある』とある。

「細呂木」ここ(グーグル・マップ・データ)の広域。

「大聖寺」この附近(グーグル・マップ・データ)。]

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