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2023/12/28

只野真葛 むかしばなし (116) 深川の異次元

 

一、築地の時分、「せうか」といふ野太鼓と、町の名主と、二人づれにて來り、夕方より、はなしごと有(あり)し時、父樣、手本(てもと)に、むだづかひにして、よき、かね、有しを、兩人に、つかはされ、

「いづかたへぞ、遊びに、ゆけ。」

と被ㇾ仰しかば、大きに悅(よろこび)、すぐに、深川へ行(ゆき)し、とぞ。

 いづくよりも繁華にて、しごく、兩人とも、もてたることにて、大うかれにて、翌晚、來りて、はなしに、

「いや、近頃におぼへぬことなりし。料理の結構さ、中々、つとめなしに、あればかりでも、やすき事。」[やぶちゃん注:「つとめなし」「自分の仕(し)まわしたのではない金ではなしに」の意か。]

とて、一晚、その夜の、おもしろかりし、はなしゝて、歸りしが、名主のかいたる女、「お長」とやらいひしを、其夜のもてなし、わすれかねて、二、三日、立(たつ)て、

「深川へ行(ゆく)。」

とて、舟をかりしに、舟宿のもの、あやしみて、

「あの燒原《やけわら[やぶちゃん注:ママ。]》へ、何しにお出被ㇾ成まし[やぶちゃん注:ママ。『日本庶民生活史料集成』版では「まし」は『ます』である。]。『ばけ物が、でる。』とて、日がくれてからは、誰(たれ)も、參りません。」

と、いはれて、おもへば、廿日ばかり先に、地步(じほ)、はらつて、やけし、あとなり。[やぶちゃん注:以下は底本でも改段落となっている。]

 其火事は、江戶中の人、しらぬ事、なし。

 さりながら、まさしく、このほど見しけしき故、餘り合點ゆかず、無理に行(ゆき)て、みた所が、有(あり)しにかはる、燒原(やけはら)なり。

「そこよ、爰(ここ)よ、」

と、少し、人のゐる所へ行(ゆき)て聞(きく)に、

「『お長』といふ女は、なし。」

と、ばかり、こたへしが、小屋がけの髮結床(かみゆひどこ)に、七十ばかりのぢゞの居(ゐ)たりしが、聞(きき)て、

「はて、かはつた名を聞(きく)人だ。むかし、『お長』といふ女が、深川一番のもので有(あつ)たが、賊に逢(あひ)て、ころされてから、誰(たれ)も其名はつぎませんが、火事について、もし、其(その)ゆふれい[やぶちゃん注:ママ。]でも、出たか。」

と、いはれし。

「うすきみわるく、すごすご、歸りし。」

と、其後(そののち)、來りての、はなしなりし。

 父樣にも、はじめに御聞被ㇾ成し時、

「大火の事を、おもひいでざりしは、ばけ物の、とばしり、かゝりしや。何を食(くふ)て、『うまし。』と、おもひしや。ふしぎこと。」

と、仰(おほせ)し。

[やぶちゃん注:「とばしり、かゝりしや」「かの二人だけでなく、私(父平助)も、その化け物に、とばっちりを掛けられた、食らったものか。」という意味であろう。]

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