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2023/12/21

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「南都の怪」 / 「な」の部~了

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 なお、本篇を以って、「な」の部は終わっている。]

 

 南都の怪【なんとのかい】 〔嘉良喜随筆巻四〕寛文十二年九月初メ、南都<奈良>今厨子ト云フ所、夜々《よよ》光ル。ソノ光ヲモトメテ地ヲ四尺程掘レバ、髑髏(ドクロ)ノ大《おほき》サノ少シ平(ヒラ)キ物アリ。中々臭気深クテ何トモナラズ。即チ捨《すつ》ルト光モナシ。マタ春日ノ一鳥井《いちのとりゐ》ノ辺《あたり》ニ、夜ニ入レバ七尺バカリノ人ノ如クナ[やぶちゃん注:ママ。]者、髪ヲ長クシテ人ヲカイテ[やぶちゃん注:「搔いて」か。「舁いて」ではおかしい。]追ヘバニゲル。コレハ野馬ノタケテ[やぶちゃん注:年を経て。]居《を》ルニテ有ルベシトナリ。希有ノ事ナリ。

[やぶちゃん注:「嘉良喜随筆」(からきずゐひつ)は垂加流神道家の山口幸充(こうじゅう 生没年未詳:日向生まれ)の随筆(全五巻)であるが、諸家の雑録・随筆からの抄録が多い。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』巻十一(昭和三(一九二八)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで(左ページ八行目から)視認出来る。

「寛文十二年九月初メ」同九月一日はグレゴリオ暦で一六七二年十月二十一日。

「今厨子」現在の奈良県奈良市今辻子町(いまづしちょう)であろう(グーグル・マップ・データ)。

「春日ノ一鳥井」春日大社のそれはここ(グーグル・マップ・データ)。]

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