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2023/12/23

只野真葛 むかしばなし (89) / 「むかしばなし」五~了

 

一、たわけなる事も、言(いひ)つのれば、事六ケ(ことむつか)しく成(なる)こと有(あり)。

 御國(みくに)にて、あるねぢけぢゝ[やぶちゃん注:「爺」。]、見世先(みせさき)にmあぐらかきてゐしが、金玉(きんたま)、あらはに見えしを、道行人(みちゆくひと)、みせの物に、直(あたい)を付(つく)る序(ついで)に、

「その金玉も、うり物か。」

と、をどけて[やぶちゃん注:ママ。]聞(きき)しを、

「左樣でござる。」

と答へし故、

「いくらだ。」

と、いへば、

「三兩でござります。」

「三兩、金を出したら、賣(うる)か。」

「隨分、うります。」

と云(いひ)し故、

「おもしろし。」

と、明日(みやうにち)、金三兩、持(もつ)て、

「きのふの金玉、かいにきた。」

と、いひし時、こなたには、死人(しびと)の金玉を切(きり)ておきて、いだしたり。

「是では、ない。」

と、いへば、

「きのふのは、看板で、うられぬ。」

と、いふを、

「それは、ならぬ。」

と、いひつのり、大喧嘩となり、中々、たがひに、きかず、うつたへに成(なり)しぞ。

 まがまがしき事かな。

[やぶちゃん注:巻掉尾に女の真葛が掲げるには、ちと、下ネタに落ち過ぎるが、これこそ、当時の稀なる才媛の作家としての面目とも言えなくもない。]

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