只野真葛 むかしばなし (84)
一、松平越中守樣、御補佐仰蒙らせられし時、父樣、鳥渡《ちよつと》はなしを御作(おつくり)被ㇾ成し。
九鬼樣と白河樣は、御手廻りも、御箱の御紋も、大かた似たる事にて、ふと、人の見まがふやうなりしを、御補佐被二仰付一御下(おささが)りがけ、俄事(にわかごと)にて見付(みつけ)の者、うろつき、下座をするや、せぬやしれぬ故、聲かけて、
「九鬼か。」
「イヽヤ松平越中守だアほさ。」
[やぶちゃん注:「松平越中守樣」「白河樣」松平定信。
「九鬼樣」摂津三田藩第九代藩主で九鬼氏第二十一代当主九鬼隆張(たかはる 延享四(一七四七)年~文政四(一八二一)年)か。
九鬼氏の家紋は「七曜」(しちよう)で、松平定信のそれは「星梅鉢」(ほしうめばち)で、似ている(リンク先はサイト「家紋のいろは」のそれら)。]