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2023/12/09

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「槌子坂の怪」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 槌子坂の怪【つちこざかのかい】 〔北国奇談巡杖記巻一〕おなじ城下<加州金沢>小姓町の中ほどに、槌子坂といへる、なだらかなる怪しき径《みち》あり。草しげく溢水《いつすい》[やぶちゃん注:ここは近くの小流れから水がしょっちゅう溢れることを言っている。]流れて、昼も何とやらんものきみ悪しき所なり。毎《こと》に小雨ふる夜半など、たまたま不敵の人かよふに、ころころと転(ころび)ありく物あり。よくよく見れば、搗臼《つきうす》ほどの横槌あり。たゞ真黒なるものにして、あなたこなたとめぐりめぐりて、既に消えなんとするとき、呵々と二声ばかり笑ひて、雷《かみなり》の響きをなし、はつと光り失せぬ。この怪を見たるもの、古《いにしへ》より幾人もありて、二三日毒気にあたりて病みぬ。故に槌子坂とよびて、夜はおのづから行きかひも薄らぎたり。いかさま古妖と見えて、昔より人々の沙汰することなりき。

[やぶちゃん注:この話、泉鏡花が使ってよさそうな怪談だが、読んだ限りの彼の小説では、記憶にない。

「北国奇談巡杖記」加賀の俳人鳥翠台北茎(ちょうすいだい ほっけい)著になる越前から越後を対象とした紀行見聞集。かの伴蒿蹊が序と校閲も担当しており、文化三(一八〇六)年十一月の書肆の跋がある(刊行は翌年)。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』第二期第九巻(昭和四(一九二九)年日本随筆大成刊行会刊)のこちらで、正字活字で読める。第一巻巻頭から二話目。標題は『○槌子坂の怪』。

「槌子坂」現存する。石川県金沢市兼六元町のこの中央(グーグル・マップ・データ航空写真)の金沢市立兼六小学校から「兼六元町交差点」方向に登る短い坂である。「ストリートビュー」で坂下から見上げたのが、これである。サイト「金沢の坂道」のコラム「槌子(つちのこ)坂の怪」で確認した。但し、リンク先のコラムでは「つちのこ小坂」と訓じている。私が「三州奇談」の注で大いに参考にさせて戴いた「加能郷土辞彙」(日置謙・一九五六年北国新聞社)の当該部を見たところ(「金沢市図書館」のこちらで原本が総て(以上は単体頁PDF画像。312MBと重いが、全ページはここ。使い勝手が非常によい)視認出来る)、そこでも、

   *

ツチノコザカ 槌子坂 金澤に在つて、今の賢坂辻から味噌藏町に入る小坂である。その名義に就いて、坊間に傳へる怪談があるが信じ難い 。

   *

とあった。而して、「ツチノコ」とくると、例の怪蛇のそれを連想し、コラムでも、実は『似たような話が加賀藩の支藩大聖寺藩にも伝わる。夏の夜、川舟で通りかかった兄弟の傍らの道を、黒く丸く一尺四、五寸(4245㎝)のものがころころと行く。竿で打とうとすると消え失せた。―寛政11年(1799)、時の藩主が宿直の藩士に語らせた怪談話(『聖城怪談録』江沼地方史研究会編)の一つである。黒く「ころころ」とあちこち転がり歩くつちのこの姿が共通している』。『つちのこは竜や河童のようにわが国に伝わる未確認動物の一つ。鎚に似た胴の太い蛇と形容される。動きは悠長で、尾をくわえて体を輪にして転がり移動する。「チー」と鳴き、いびきをかくともいう。猛毒を持つという説もある。マムシでも近づいただけで毒気にあたる(場合がある)というから、つちのことなるともっと大変だったに違いない、などと考えてしまう』とあって、その伝承の親和性は、確かに高い。別名「野槌」。私は「つちのこ」の親衛隊ではない(存在しないと断定している)ので、「南方熊楠 本邦に於ける動物崇拜(18:野槌)」で注をしておいたから、そちらを見られたい。]

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