柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「蛇甑」
[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。
底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。
読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。
また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。
なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。]
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蛇甑【へびこしき】 〔甲子夜話巻八十七〕丙戌<文政九年>六月廿五日、小石川三百坂<東京都文京区内>にて蛇多く集《あつま》り、重累《ぢゆうるい》して桶《をけ》の如し。往来の人、歩を留めて皆見る。その辺なる田安殿の小十人、高橋百助の子千吉十四歳なるが云ふには、この如く蛇の重なりたる中には必ず宝ありと聞く。いざ取らんとて袖をかゝげ、右手を累蛇の中にさし入れたるに、肱《ひじ》を没せしが、やゝ探りて果して銭一文を獲《え》たり。見るに篆文《てんぶん》の元祐通宝銭なり。是より蛇は散じて行方知れずと。奇異と云ふべし。
追記す。田舎にてはこれを蛇塚と云ひて、往々あることとぞ。<『兎園小説外集巻一』に同じ記載がある。『甲子夜話』には蛇塚とあるが、これは蛇を埋めた塚と紛らわしいので、こゝには『兎園小説』に「ヘびこしき」とあるのに従った>
[やぶちゃん注:事前に「フライング単発 甲子夜話卷八十七 4 蛇(ヘビ)塚」を公開しておいた。非常に見難いが、静山の挿絵があるので(宵曲はカットしている)、掲げておいた。
「兎園小説外集巻一」私の『曲亭馬琴「兎園小説外集」第一 蛇怪 鈴木分左衞門 / へびこしき 山本庄右衞門』を参照されたい。]
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