譚海 卷之六 三州瀧山淸涼院年始鏡餅獻上の事
[やぶちゃん注:これまでのフライング単発で、推定歴史的仮名遣の読みは勿論、句読点・記号変更・追加、段落成形を行ってきた関係上、以下でも、読者の読み易さを考え、「卷之六」以降、それをルーティンに正式に採用することとする。
なお、この前の二篇、
「譚海 卷之六 長州にて石を焚薪にかふる事 附四國弘法大師利生の事」
及び
は、既にフライング公開してある。]
○三河國、瀧山淸凉院(さうざんせいりやうゐん)といふに、東照宮御靈屋(みたまや)、有(あり)。
それへ、關東より、每年始(はじめ)、鏡餅を猷ぜらるゝ事、恆例也。
いつも、師走十七日、白米を折櫃(おりびつ)に入(いれ)、御賄(おんまかない)の役人、付(つき)そひて、東海道を出立(いでたち)、三州へ持參致し、淸凉院の瀧にて、此白米を、かしぎ、寺僧、鏡餅に調(ちやう)じて年始に備へ、十七日迄ありて、十八日に、右の鏡餠を撤(てつ)し、又、折槪櫃に納(いれ)て、役人、警固して、江戶へ送り奉るを、關東にて御頂戴ある事也。
「彼(かの)寺に、瀧、有(ある)故、『瀧山』といへる。」
よしを、物がたりぬ。
[やぶちゃん注:「三河國、瀧山淸凉院といふに、東照宮、御靈屋、有」底本の後注に、『愛知県額田郡旧常磐村の滝山寺(そうざんじ)。天台の寺院で、徳川家康の信仰厚く、その霊祠がある。寛永年中重修して、天台別院とした』とある。現在は合併変更で、愛知県岡崎市滝町(たきちょう)山籠(やまごもり)になった。瀧山寺はここ(グーグル・マップ・データ。以下同じ)で、同寺の北東直近に滝山(たきさん)東照宮がある。
「折櫃」檜の薄板を折り曲げて作った容納具。全形は、四角形・六角形・円形・楕円形などさまざまで、檜の葉を敷いて、菓子・肴(さかな)などを盛り、四隅に作り花などを立てて、飾りとした。音変化で「をりうづ(おりうず)」とも呼ぶ。]
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