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2024/01/11

柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」 「蛇章魚に化す」

[やぶちゃん注:本書は昭和三六(一九六一)年一月に東京堂から刊行された。この総題の「随筆辞典」はシリーズ物の一書。本書については、初回の冒頭注を、また、作者については、私の『柴田宵曲 始動 ~ 妖異博物館 「はしがき」・「化物振舞」』の私の冒頭注を参照されたい。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちらを使用した。新字新仮名である。但し、加工データとして、所持する筑摩書房『ちくま文芸文庫』の「奇談異聞辞典」(底本を解題したもの・二〇〇八年刊)を加工データとして使用させて貰った。ここに御礼申し上げる。

 読みが振れる、若い読者が躓くかも知れぬ箇所には《 》で読みを添えた。引用文の場合は歴史的仮名遣を用いた。なお、( )は柴田自身が附したルビである。

 また、柴田のストイックな編集法を鑑み、私の注は、どうしても必要と判断したもののみとした。幸い、有意な部分は私が既に電子化注したものがあるので、それをリンクさせてもいる。但し、この原本は新字新仮名であるため、私が電子化していない引用文の原本に当たることが出来たものは、極力、視認出来るように、国立国会図書館デジタルコレクションや他のデータベースの当該部をリンクさせるように努めた。

 なお、辞典形式であるので、各項目を各個に電子化する。公開は基本、相互の項目に連関性がないものが多いので、一回一項或いは数項程度とする。

 

 蛇章魚に化す【へびたこにけす】 〔閑田耕筆巻三〕章魚の内に、あるひは蛇の化《け》するもの有りといふ。ある人の話に、越前にて大巌にふれて尾を裂きたるが、つひに脚に成りたり。その間、時をうつせしといへりし。また使ひし僕《しもべ》も彼《か》国の者にて、これは山より小蛇あり。また下り来《きたつ》て水際に漬《つか》り、小石にふれ、漸々に化して水に入りたりといひき。彼辺にては折々有る事ならし。〔笈埃随筆巻五〕何国《いづこ》の事にや、春の頃蛇多く出来《いできた》りて、海中に走り入《いり》て蛸となれりといふ事ありき。甚だ怪しき事におもへり。近頃越前に通ふ商人《あきんど》の語るを聞きしに、春三月のころ彼《か》国に有りしに、所の人々誘ひて蛇の蛸になるを見に行くべしとて、破籠様(わりごやう)の物を携へ、長閑(のどか)なる日に浜辺に遊ぶ。暫くしてとある山の尾崎《をさき》より蛇出で来りて、真一文字に浜を下り、海中に游ぎゆらめき、十間許りも出るや、尾を上げて打つ事数遍《すへん》しぬれば、尾先裂けて足長く別れ出づ。こはふしぎなる事哉と目をはなさず見留《みとど》め居《を》るうち、いまだ半身は蛇の儘にゆられけるが、また水に打返り打返りするかと見れば、忽ち全体蛸と化《け》して沖の方へ行く。それより追々出《いで》てはみな斯《かく》のごとし。その化してしばらくは、つかれ苦しみぬるや、悩める様なり。これ等《ら》世にいふ手長蛸に毒ありとするの本《もと》かと聞《きき》て、さては浮きたる事にもあらざりしと覚ゆ。<『兎園小説第六集』に同様の文がある>

[やぶちゃん注:実は、この蛇が蛸に変わるという話は、動物怪奇談の中では、非常にメジャーなもので、私の怪奇談集でも枚挙に遑がない。恐らく一番古い電子化は「佐渡怪談藻鹽草 蛇蛸に變ぜし事」である。挿絵入りのものでは、「宿直草卷五 第六 蛸も恐ろしき物なる事」があり、「谷の響 二の卷 三 蛇章魚に化す」もある。「想山著聞奇集 卷の參 七足の蛸、死人を掘取事」の途中にも言及がある。

「閑田耕筆」「青木明神奇話」で既出既注。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆全集』第六巻(昭和二(一九二七)年国民図書刊)のここで当該部が正字で視認出来る。左ページ後ろから五行目。

「笈埃随筆」著者百井塘雨と当該書については、『百井塘雨「笈埃隨筆」の「卷之七」の「大沼山浮島」の条(「大沼の浮島」決定版!)』その冒頭注を参照されたい。国立国会図書館デジタルコレクションの『日本隨筆大成』㐧二期卷六・日昭和三(一九二八)年日本隨筆大成刊行会刊)所収の同作の当該部で正規表現で視認出来る。標題は『○變態』。但し、その項の中間の一部を抄録したもの(左ページ一行目途中から八行目まで)。カットされた前の話は、笹が魚に化す話で、後の部分はタコブネの話である。

「『兎園小説第六集』に同様の文がある」私の『曲亭馬琴「兎園小説」(正編) 蛇化して爲ㇾ蛸』を見られたい。馬琴の長男興継の絵図附き。]

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