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2024/01/12

フライング単発 甲子夜話卷十三 11 筑紫に狐を捕士ある事

[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして、句読点の変更・追加と、読み・記号・改行・段落を加えた。標題の「捕士」は「とるし」。]

 

13―11 筑紫(つくし)に狐を捕(とる)士ある事

 筑前博多、門徒宗、寺の主僧、婦(ふ)、病死の後(のち)、顏色(がんしよく)、憔悴す。

 人、訝(いぶか)りて、其故を問へども、不ㇾ云(いはず)。

 尋(つ)いで、形容枯槁(こかう)するに至る。

 また問ふに、始(はじめ)て云ふは、

「過(すぎ)し頃より、亡妻、出で來(きた)り、我と語ること、每夜にして、明(あけ)に徹す[やぶちゃん注:明ける朝まで徹宵する。]、因(よつ)て、眠ること、能はず。故に玆(ここ)に逮(およぶ)。」

と。

 其徒(そのと)、爲(せ)んすべなき折から、領主の臣に、狐を捕ることを掌(つかさど)る士あり【これは、侯の家製(かせい)の「烏犀圓(うさいゑん)」の方(はう)あり。この藥劑中に「狐膽(きつねのい)」ある故に、抽狐(ちうこ)職掌の者あり、と云(いふ)。】。

 曰く、

「我、所存あり。その亡靈を見て後(のち)、云はん。」

 人、因(よつ)て彼(か)の士を寺に伴ふ。

 士、夜(よる)、その家の牀下(しやうか/ゆかした)に隱れて窺ふ。

 亡靈、果(はたし)て、來(きた)る。

 士、乃(すなは)ち、云ふ。

「よし。我に術(じゆつ)あり。」

と云(いひ)て、翌夜(あくるよ)、狐を捕るわなを携(たづさ)へ來(きたり)て、亡靈の來路(らいろ)に設(まう)く。

 靈、來り、わなにある、餌(ゑさ)の香(か)に、蕩心(たうしん)して、竟(つひ)に、これに罹(かか)りて、死せり。

 視れば、一大老狐なりし、と。

 自ㇾ是(これより)、主僧の病(やまひ)、漸々(やうやう)、快復せり、とぞ。

■やぶちゃんの呟き

「烏犀圓」現在も「野中烏犀圓」(のなかうさいえん)がある。医薬品医療機器情報提供サイトのこちらによれば、『野中烏犀圓は寛政八』(一七九六)『年』に、『旧佐嘉藩主第八代鍋島治茂公の施薬局に於いて』、『秘薬として調製せられしものを』、『当野中家へ下賜せられたもので牛黄・高麗人参・当帰・川芎(せんきゅう)『その他』、『八種の和漢生薬に蜂蜜を加えた漢方保健剤で』あるとある。但し、狐の胆(い)は現行のものには含まれていない。『効能・効果』の項には、『次の場合の滋養強壮』とあって、『肉体疲労』・『胃腸虚弱』・『虚弱体質』・『食欲不振』・『病中病後』とあった。

「狐膽(きつねのい)」「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 狐(きつね) (キツネ)」で、良安は、まず、「本草綱目」を引用して(〔 〕は私が補訂した部分)、

   *

狐〔の〕膽〔(い)〕【臘月、之れを收む。】 人の卒死を治す【雄狐の膽。】温水にて、研〔(す)れるものを〕灌ぐ。〔それ、〕喉に入らば、卽ち、活す【時の移れる者は及ぶこと無し。】[やぶちゃん注:人の急死した場合でもこれを蘇生させる【それには雄狐の胆(い)でなくてはならない。】。温水を注ぎながら擂り砕いたものを、服用させる。それが咽喉に入った瞬間、忽ち、生き返る【但し、頓死してから有意に時間が経過してしまった場合は生き返らすことは出来ない。】。]

   *

と紹介した上で、良安の評として、

   *

 狐〔を司るとせる家〕に花山家・能勢〔(のせ)〕家の二派有り。相ひ傳へて云はく、往昔、狐狩り有りしとき、老狐、將に捕(と)られんとし、急ぎ迯(にげ)て花山殿の乘〔れる〕輿の中に隱れて、赦〔(ゆるし)〕を乞ひ、遂に免るゝを得。能勢の何某(なにがし)も亦、時、異なりと雖も、死を助けたるの趣き、相ひ同じ。共に、狐、誓ひて曰はく、「子孫に至りて、永く、宜しく厚恩を謝すべきなり」〔と〕。此れより今に于〔(おい)て〕、狐魅〔(きつねつき)〕の人有るときは、則ち、二家の符を以つて閨〔(ねや)〕の傍らに置けば、乃〔(すなは)〕ち、魅〔(つきもの)〕、去りて、平愈す。其の固〔き〕約、人も亦、愧〔(は)〕づべし。又、能く死を守る[やぶちゃん注:死に臨む際の態度が甚だ立派であることを言う。]。如〔(も)〕し、人、有りて、生きながら、狐の腹を割〔(さ)き〕、膽を取ること〔あれど〕、然れども、動かず、目、逃〔(のが)す〕まじかず[やぶちゃん注:目を逸らさず。但し、訓読には自信はない。]、臟腑を刳(さ)き盡(つく)されて、後、死す。此れ、乃ち、丘を首するの理〔(ことわり)〕か。

   *

と述べている。

「牀下(しやうか/ゆかした)」寺だから、床下は通常の民草の住居と異なり、相応に床が高いので納得出来る。]

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