譚海 卷之十 同所の寺無緣塔の怪の事(フライング公開:目次標題のみ「無緣塔」となっている)
[やぶちゃん注:現在、作業中である柴田宵曲「随筆辞典 奇談異聞篇」のために必要となったので、フライングして電子化する。特異的に句読点・記号の変更・追加と、読みを加え、段落も成形した。なお、標題の「同國」は前の条が『越後蒲原郡』で始まることによる。但し、その村名は伏されてある。以上の標題の寺名も誤っている。因みに、上記標題(「目次」にあるもの)の『無緣塔』はママである。「目次」や後注でも、編者は、ここのみが「無緣塔」となっていることを、注記していない。後注があるのだが、本文の「無縫塔」についての解説を淡々としているだけで、目次の「無緣塔」の誤りについては、一切、触れていないのである。]
同村に鄰(となり)て、一寺、在(あり)。
此寺、むかしより、あやしき事、あり。
其(その)住持、死期(しき)、いたれば、ちかき川邊に、誰(たれ)もてくるともなく、石の墓じるし、ひとつ、出來(いでく)る。
これを、「無縫塔」と、いひならはし、此石塔、出(いづ)れば、ちかき年の内に、住持、はたして死ぬる事、いつも、たがふ事、なし。
「若(も)し、この災(わざはひ)をのがれむとおもふ僧は、寺を逐電(ちくでん)すれば、わざはひを、まぬかるゝ事。」
と、いへり。
[やぶちゃん注:以上の話は、私の橘崑崙作の「北越奇談 巻之二 古の七奇」の中に、同じ内容の話が村名・寺名(但し、誤りがある)を示した上で、同じ奇譚をしっかりと語っている。そちらで、細かな注も附してあるので、そちらを、必ず、見られたい。そこでは、ちゃんと「無縫塔」となっている。]
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