譚海 卷之九 相州三浦冬月牛馬飼方の事
○相州三浦にて、冬月(ふゆづき)、稗(ひえ)を殼ともに挽(ひき)て、每夜、鍋にて焚(たき)、諸手にあまるほどの、にぎり飯に拵(こしら)へ、「こぬか」を箕(み)のうへに、ちらし置(おき)、それへ、にぎりたるひえを、まろばすれば、小糠、くるみて、豆の、粉をまぶしたるやうになるを、それを、翌日、さめたるまゝ、牛馬に、かふ事なり。さすれば、來春に至(いたり)て、牛馬の毛色、うるはしく、あぶらつきて、見事に成(なる)事なり。春は、にぎりたるひえ飯を、「こぬか」をまぶさで、人も、くひものにすると、いへり。
[やぶちゃん注:「稗」単子葉植物綱イネ目イネ科キビ亜科キビ連ヒエ属ヒエ Echinochloa esculenta 。]