譚海 卷之八 藝州嚴島明神祭禮の事
○藝州嚴島明神の祭禮には、いつも、烏二羽、供物を啣(くはへ)て、空(そら)へ冲(のぼ[やぶちゃん注:この読みは極めて珍しい底本の編者注記。])り飛去(とびさる)事、有(あり)。
「往古より、祭祀の度(たび)ごとに極(きまつ)てある事なり。此からす、雌雄にて、明神へ、つかふまつる。ひなを產して生(おひ)たつときに、いたれば、そのひなに、祭祀の所作をゆづりて、親鳥は飛去(とびさる)。」
とぞ。是を巖島にては「四鳥のわかれ」といふ事に、傳へ、いふなり。
[やぶちゃん注:個人ブログ「山野草、植物めぐり」の「宮島 神鴉(大頭神社と四鳥の別れ)」がよい。社名の「大頭」は「おおがしら」(現代仮名遣)と読む。この神社は厳島の本州対岸にあり、ここに出る「四鳥のわかれ」の大事なロケーションであることが判る。同神社の石碑の当該部も電子化されており、写真もある。]