譚海 卷之九 赤ゑひの魚針にさゝれたる治療の事
○赤ゑい[やぶちゃん注:ママ。]の針は、尾に二本、有(あり)。獵師、釣得(つりう)れば、先(まづ)、針を斷(たち)きる。あやまちて、此はりにかゝるときは、惣身(そうみ)、しびれ、いたむ事、堪(たへ)がたし。
此痛(いたみ)を療治するには、田の畔(あぜ)に生(おい)たる丸き葉の草あり。それを、とりて、せんじあらへば、卽時に、いゆるなり。
[やぶちゃん注:国立国会図書館本本文では(「目錄」は『ゑひ』と正しいが)、致命的に『赤えび』と誤っている。
軟骨魚綱板鰓亜綱エイ上目エイ亜区トビエイ目アカエイ科アカエイ属アカエイ Dasyatis akajei
である。その毒針の恐ろしさは、「大和本草卷之十三 魚之下 海鷂魚(ヱイ) (アカエイ・マダラトビエイ)」の私の注を参照されたい。死に至るケースもある。
「田の畔に生たる丸き葉の草」一つ、思いつくのは、セリ目ウコギ科チドメグサ属チドメグサ Hydrocotyle sibthorpioides である。当該ウィキによれば、『収斂作用による止血成分があり、古く民間で外傷の止血に使ったため』、『この名がある。血止め薬の使用法としては、生葉を揉んで切り傷などの血止めに使うとよいとされる』。『あるいは、洗ったあと乾燥して生薬のように用いる』とあった。]