譚海 卷之九 備前侯山莊結構の事
○池田家、備前の在所に構られたる山莊に、納涼の亭あり。
二階作りにして、はしごを上れば、殘らず板敷にて、其中央を、幅壹間ばかりの川、ながるゝなり。
「川の左右に並居(なみゐ)て、納涼納凉する。」
と、いへり。
かたはらの襖を、ひらけば、戶棚の内より、瀧おつる所、有(あり)、盛夏も其水、甚(はなはだ)、ひややかにて、たへがたきほどなり。
「皆、大石にて築立(つきたて)たる二階なり。」
と、いへり。
[やぶちゃん注:「池田家」「備前」岡山藩(備前国及び備中の一部を領有した大藩)。備藩庁は岡山城(備前国御野郡。現在の岡山県岡山市北区)で、殆んどの期間を池田氏が治めた。
「山莊」位置不詳。]