譚海 卷之八 藝州嚴島明神佳景の事
○藝州嚴島の明神の景色は、言語に述(のべ)がたし。
汐(しほ)のみつるときは、拜殿まで、海に成(なり)て、板敷へ、ひたひた、汐のひたるほどにて、社頭の後(うしろ)の山ぎはまで、皆、海のごとくに見ゆるなり。
別(べつし)て、燈籠を點じたる景、海水に映じたるほど、奇觀、いふばかりなし。
燈籠、一夜(ひとよ)點(てん)ずる料(れう)、銀十匁づつ、初穗を、いだすよし。
時々、燈明銀(ぎん)奉納の者、たえず、拾匁の油料にて、二百八十軒の𢌞廊へ、のこらず、燈(ともしび)を點ずる事なり。
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