譚海 卷之九 鹽の味南北異なる事
○鹽(しほ)は、南海に燒(やく)所のものは、甘味なり。北海にて、やく所は、にがし。風土の異(こと)なるによるなるべし。
羽州龜田海邊にて鹽をやく釜は、諸(もろもろ)の貝がらを集(あつめ)て、火に燒(やき)て、うちくだきて、粉に、なし、それを、「にが鹽」にて、かためて、こしらふるなり。「にが鹽(しほ)」を、其(その)方言には、「にがり」と云(いふ)。
[やぶちゃん注:「羽州龜田」現在の由利本荘市岩城地区の亀田町から東の海辺であろう(グーグル・マップ・データ)。江戸時代は岩城氏亀田藩の城下町であった。
「にが鹽」「にがり」海水から食塩を採る際、食塩を結晶させた後に残る溶液。主成分は塩化マグネシウムで、その他、硫酸マグネシウム・塩化カリウム・食塩・臭化カリウムなどを含み、苦味がある。古くから豆腐の凝固剤として用いられることが、よく知られているが、食用塩の原材料に使用することも普通に今も行われている。]