譚海 卷之六 同所非人の事
[やぶちゃん注:これまでのフライング単発で、推定歴史的仮名遣の読みは勿論、句読点・記号変更・追加、段落成形を行ってきた関係上、以下でも、読者の読み易さを考え、「卷之六」以降、それをルーティンに正式に採用することとする。「同所」は前条を指し、「大坂」である。なお、以下の地名は総てどこであるか判っているが、同和の観点から、地図等の注は示さない。「富田林市」の「文化財デジタルアーカイブ」の「富田林市史」第二巻の「本文編Ⅱ」の「近世編」「第二章 富田林地方の近世村落」の「第二節 近世身分制と近世部落」の「近世部落の成立」以下を見られ、批判的視点を以って読まれたい。]
○大坂に非人の頭(かしら)、四人、有(あり)。
東・西・南・北の四隅なる、千日(せんにち)・よしはら・小長谷(をばせ)・富田(とんだ)と云(いふ)所に住(ぢゆう)す。
士人は「四箇(しこ)」と呼(よぶ)事なり。又、白き股引(ももひき)に、白き「ぼたん」付(つけ)たるは、「ゑた」のみ、はく。只の人は、はく事、なし。
下の帶(おび)も染(そめ)たるを、しめるは、非人・「ゑた」のみなり。
又、刑罪人(けいざいにん)、町中(まちぢゆう)引(ひき)まはさるゝ時、科(とが)の次第、紙のぼりに、しるしある事なれども、其罪科の次第を、一町(ちやう)ごとに、馬を、とゞめて、よむもの有(あり)。此役は、無地の染物(そめもの)する紺屋の役也。馬に付(つき)そひて、ありく事也。
又、しろき股引に、くろき「ぼたん」付(つけ)たるをば、町の髮ゆひを業(なりはひ)とする者のみ、はく也。髮ゆひも、役、ありて、入牢の罪人の月代(さかやき)剃る事を、つとむる也。
[やぶちゃん注:まず、「一般社団法人ひょうご部落解放・人権研究所」の「部落問題用語解説」の「穢多」・「非人」の解説を見られたい。その上で、「非人」は当該ウィキを見られたいが、その「関西」の項には、『畿内においては、中世以来』、『有力寺社との結びつきが強く、多くが』、『各寺社の管理下に置かれた。しかし』、『制度として整備された関東の弾左衛門による組織的な集中支配下に置かれた関係とは異なる。そのためか』、『京都や大坂の町奉行で解決できなかった例が多く残る。時代・地域によっても多様であり、未だ解明されていない部分が多い』とある。「ゑた」(穢多)も、当該ウィキを見られたい。因みに、私は高校教員時代、特に同和教育推進校に指定された学校に於いて、一年間、委員会の委員長を務めたことがあり、「全国人権・同和教育研究大会」にも出席した。会場となった複数の中学校で生徒たちが、自主的に「遠い所から、ありがとう御座います!」と声を掛けられたのを思い出す。]