譚海 卷之八 同國南海の地一村日蓮宗の事
[やぶちゃん注:この前の話「上總國大久保に樹の化物出る事」は既にフライング公開している。而して標題・本文の冒頭の「同國」は「上總國」を指す。]
○同國、南方瀕海(ひんかい)の一村は、殘らず、日蓮宗にて、他の宗旨、なし。爰(ここ)を六十六部の修行者とほりても、その道を其まゝ掃除して、忌嫌ふほどの事なり。
[やぶちゃん注:村名を出していないが、これは、恐らく旧小湊村、現在の千葉県鴨川市内浦(グーグル・マップ・データ)、それに接する日蓮が生まれた地の近くに後に創建された誕生寺がある千葉県鴨川市小湊等の旧近村ではないかと思われる。日蓮宗は「立正安國論」で知られる通り、あらゆる他宗を排撃した。中でも日蓮宗徒以外を徹底的に拒否した「不受不施派」は江戸時代も禁教扱いであった。但し、日蓮の認識から考えれば、「不受不施派」は日蓮宗の中で最も正統にしてファンダメンタルな一派であると私は論理的には考えている(なお、私は無神論者であるが、聖書も「立正安國論」も読んだ。因みに、禅の思想と、人としての親鸞を高く評価はしている)。而して、江戸時代の「不受不施派」の正統派は、日蓮所縁の房総半島、「上總國」「安房國」等に多く潜伏していたからである。]