譚海 卷之九 攝州鼓の瀧の事
○攝州、「つゞみの瀧」、今は絕(たえ)て、其跡、白き砂のみ、殘りてあり。
羽州の人、其邊(そのあたり)へ行(ゆき)たるとき、
「ちかき道なり。」
とて、案内者の申(まふす)にまかせて、
「瀧つぼの跡を、すべりおりて、きたる。」
と、物がたりせしなり。
[やぶちゃん注:「鼓の瀧」謡曲の「鼓瀧」がある。脇能物で作者は未詳。当代に仕える臣下が、宣旨により、山々の花を見て回るうち、摂津の国「鼓の滝」で、木こりに姿を変えた山神に会い、奇特の舞を見るというもので、永く廃曲であったが、現在、復元して演じられている。この話は、話者の、それに基づく創作であろう。]