譚海 卷之七 播州石の寶殿の事
譚海 卷の七 播州石の寶殿の事
[やぶちゃん注:底本では「目錄」の順列に問題がある。国立国会図書館本のそれが正しい。]
○又、播州、「石(いし)の寶殿(はうでん)」とて、まします。
御影石を、だす、山のふもとのかたそばにあるみやしろにて、御社(みやしろ)のさま、橫ざまに、たふれて、其下には、堀をほりめぐらして、あり。
「此水、汐(しほ)のみちひにしたがひて、たがはず。」
と、いへり。
高さは、二丈ばかり、戶口は、上のかたに向(むかひ)て、それに年々の土、うづみて、大(だい)成(なる)樹ども、生(おい)しげりて有(あり)。
橫のながさは、三、四丈もありぬべく、みゆ。
神代に造られたる賓殿にて、萬葉集に、
おほなむちすくな彥名のつくれりし
しづの岩屋はいく代へぬらん
と、よめる所なり、とぞ。
まことに、いかめしきみやしろなり。
そこに、あるとし、參詣の人のともなひし、八歲に成(なり)たる子どものよめる歌とて、
稀にきて又こん事もかたければ
名殘をしづの石のみやしろ
と。
「をさなきもののよめるには、稀有なる事なり。」
と、人の、物がたりし。
[やぶちゃん注:これについては、私の「諸國里人談卷之二 石寶殿」の私の注を見られたい。リンクで画像が見られる。]
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