譚海 卷之八 鰹節をこしらふる事
○鰹ぶしをこしらふるは、皮ともに、ふしに切(きり)て、蒸籠(せいろ)につめて、むすなり。薪(まき)には靑松葉を用ゆ。
松の葉にむされて、鰹の皮と身の間に有(ある)あぶら、したゝり落(おつ)る事、数日(すじつ)、そののち、せいろう、取出(とりいだ)し、皮をさりて、常のたき火にて蒸(むす)事、一日にして、四斗樽に入(いれ)、ふたをして、四、五日、へて、取出しみれば、靑き「かび」、ひまなく生ずるを、繩にて、すり落(おと)し、又、樽につめ入て、ふたをなし、四、五日、經て、取出せば、「かび」を生ず。
それを、すり落(おと)して、又、もとのごとく、樽に入置(いれおき)、後(のち)には、「かび」、生ぜず。
其時、取出し、日のあたる所に、ほしたるを、最上のものとす。
此(この)ごとくせざるは、かつをぶしになせし後(あと)も、暑中は「かび」を生ずるなり。
[やぶちゃん注:ウィキの「鰹節」をリンクさせておく。]