譚海 卷之九 和州土人まむしをさくる法の事
[やぶちゃん注:前話とは蛇繋がり。]
○和州には、「まむし」、殊に多し。
土人、常に竹の筒に「たばこのやに」を、たくはへ、「なめくじ」を調和し、「竹のへら」を、そへて、腰につけ、往來に所持するなり。
いづくにても、「まむし」にさゝれたると覺えて、足、いたむときは、そのまゝ、「たばこのやに」を、「竹べら」につけて、いたむ所へ、ぬり付(つく)るなり。かくすれば、くはれたる所(ところ)癒(いえ)て、のちのうれひ、なしと、いへり。
又、何國(いづく)の事にか、「まむし酒」といふを、つくる事、有(ある)よし。
酒がめに酒をたゝへ、其上に、竹かごを釣(つり)て、まむしを、いくらも入(いれ)おけば、まむし、かごのうちにて、たがひに、すれあひて、身より膏(あぶら)をいだす事、をひたゞし[やぶちゃん注:ママ。]。其油、酒中にしたゝり、和して、白泡(しろきあは)の如くなるを、酌(くみ)えて、服するなり。
精氣を、ます藥なるよしを、いへり。
[やぶちゃん注:「まむし」クサリヘビ(鎖蛇)科マムシ亜科マムシ属ニホンマムシ Gloydius blomhoffii 。私が富山県高岡市伏木で伏木高校の文化祭で私の所属していた生物部の先輩が、一升瓶に入れた「マムシ酒」を展示していたが、二月(ふたつき)前に焼酎に漬けたものであったが(酒量は半分程だった)、未だに生きており、なんと、♀で、子どもが中で生まれていた。実際、三ヶ月経って、酒量が減ったので、足そうとして、飛び出したマムシに噛まれたという事実事例を知っている。おそるベシ! マムシ!]