譚海 卷之九 同國榊原溫泉幷貝石の事
[やぶちゃん注:「同國」は前話を受けるので、「伊勢國」を指す。]
○同國、榊原と云(いふ)ところに、溫泉、有(あり)。功驗(こうげん)おほくして、病人のつどふ湯なり。
[やぶちゃん注:「榊原」「温泉」現在の三重県津市榊原町(さかきばらちょう:グーグル・マップ・データ。以下同じ)の榊原温泉。]
其地に一(ふとつ)の山、有(あり)。ことごとく貝殼、岩に着(つき)て有(あり)、山中をほる事、幾重(いくへ)に及びても、皆、底より、貝の類(るゐ)、まじり出(いづ)るなり。海邊(かいへん)に遠き地なれど、此一山(いつさん)のみ、かくの如し。其所のものは、「貝石山(かひせきざん)」と稱するよしを、いへり。
[やぶちゃん注:「貝石山」同温泉町の北の榊原川左岸直近にある。「三重県観光連盟」のサイト「観光三重」のこちらに、『約』千五百~二千『万年前(新生代)の化石が出土する事からこの名がついた』。『もともと』対岸の『射山』(いやま)『神社』(ここ)『のご神体だったと見られ、貝石山の名がつくまでは射山(湯山)と呼んでいたようである』。『ここから出土する化石は海の魚介類、特に二枚貝、巻貝などが多く、鮫の歯やウミユリなど約』三十『種類が記録されている』とある。]