譚海 卷之十一 五穴辨天の事
[やぶちゃん注:最後の割注は前話と同様の処理をした。]
○辨財天は海邊巖洞黑地にましますよし、「最勝王經」に見えたり。
相州江の島など、南海をうけて龍池を備(そなへ)たるをみれば、池形、說(とく)に符合せるも不思議なる事なり。
「金掘(きんほり)のひらきたる所。」
の樣にいふ人もあれど、全く、强(しひて)、ベからざる物なり。
本朝に「五穴の辨天」といふあり。「江州竹生島」・「藝州嚴島」・「奥州金華山」・「駿州富士の洞(ほら)」・「相州江の島」なり。
五ケ所の土を取(とり)て辨財天を修(しゆ)する法あり。
又、「最勝王經」に「しらまんだ山」といふ所の方(かた)にありて、金を出す事を、說(とき)たり。
本朝にも奧州・羽州の地、北にあたりて、いにしヘより、黃金を出(いだ)す事なれば、黃金は、北の方にある事、經說に、たがはず。殊に金華山は辨財天の靈場にて、參詣の者、沙金を踏(ふみ)て、往來するよしを聞(きく)にも、「最勝王經」の所說旁(かたがた)、うたがひなき物に覺えぬ【註。この條、別本になし。】。
[やぶちゃん注:「しらまんだ山」不詳。]