譚海 卷之十二 子供勞咳に似たる病する事
○男女ともに、十五、六歲より、廿歲(はたち)までの内に、「らうがい」とて、わづらふ事、あり。誠の「らうがい」には、あらず、これは、十五、六より、はたちごろまでは、食(しよく)を、くひ過(すぐ)るゆゑ、「ひい」[やぶちゃん注:「脾胃」。]、きよ[やぶちゃん注:「虛」。]して、食物、「ひい」に、もたるゝまゝ、痰を引出(きいいだ)し、たまり、又、せきを、おこし、氣むづかしく、わづらふを、大かたは、
「勞咳なり。」
とて、「らうがい」の療治のみを、するゆゑ、「ひい」、「きよ」は、なほらずして、日數(ひかず)を、ふれば、誠の「らうがい」に成(なり)て、しぬるなり。
子どもの食(しよく)、すすみて、いや、くひに、くふ時は、はやく心得て、食滯(しようくたい)を、とく、りやうぢして、なほすべき事なり。
[やぶちゃん注:底本には最後に編者割注で『(別本缺)』とある。しかし、この理屈は合わない感じが強い。過食による消化器及び呼吸器の不全状態が起こり、その患者に肺結核の薬を投与し続けると、本当の肺結核になるというのは、おかしい。寧ろ、肺結核の初期症状(全く症状が生じないこともある)が風邪をひいた際と同じ症状であるのを、見過ごして、風邪の治療燒
「ひい」=「脾胃」漢方で、現在の消化器器官機能相当の様態を呼ぶが、これは解剖学的な意味とは異なり、消化管の消化吸収機能を生理的に包括したものである。
「きよ」=「虛」漢方の「虚証」(きょしょう)のこと。中医学では、病気を正気(身体の抵抗力)と邪気(病毒の破壊力)との戦いと考え、正気が衰えてくると、弱い邪気であっても負けて、病気を発症すると捉える。そうした中でも、初期は生体防御反応が乏しいために、却って症状が現れ難くなる状態をも含む。]

