譚海 卷之十二 小兒養有事
[やぶちゃん注:標題は「しやうに、やしなひ」(方)、「あること。」と読んでおく。]
○小兒、五、六歲までは、乳(ち)を、のましむべし。其母、乳、少(すくな)くば、乳母を取(とり)て養ふべし。さあれば、成人に隨ひ、實性(じつしやう)にして、病氣、すくなきもの也。
おほく、世間の子供を見るに、乳、少(すくなく)して、そだてたるは、生長して、不慮の病(やまひ)を得ざるもの、なし。
[やぶちゃん注:授乳開始時に分泌する最初の母乳である初乳は、新生児にとって理想的な栄養源で、高濃度で、タンパク質の含有量が高く、栄養豊富であるため、少量でも乳児小さな内臓には十分の量である。初乳は脂肪の含有量も少なく、消化し易く、最適な方法で乳児発達を始動させる成分が極めて多く含有している。また、さらに重要なことは、初乳が免疫系の構築において、極めて重要な役割を果たしているからである。初乳に含まれる細胞の内、最大でその三分の二は、感染症から身体を守ってくれる白血球であり、乳児が自分自身で感染症と闘い始める助けとなり、同じくそこには、sIgAと呼ばれる極めて重要な抗体が豊富に含まれており、これは血流の中に入っていくのではなく、消化管の内側で膜となることで、乳児を病気から守る。さらに、新生児に頻繁に大便をさせる下剤のような役割を果たす。これは子宮にいる間に摂取した、あらゆるものを、乳児が胎便(黒くて粘り気のある便)という形で、体外に排泄して、腸を健康に空にする。さらに頻繁に排便することは、新生児黄疸のリスクを低減する。乳児は高いレベルの赤血球を持って誕生しており、これが身体の周囲の酸素を取り込むが、こうした細胞が破壊される際、乳児の肝臓はこれらの処理を助け、ビリルビンという副産物を生成する。乳児の肝臓がビリルビンを処理出来る程度まで十分に発達していない場合、ビリルビンが器官内に蓄積し、黄疸を引き起こすのである(以上は母乳育児製品の会社「medela」の「初乳はなぜ大切なのでしょうか?」を参照した)。
「實性」性格が誠実であったり、実直であったりすること。]