譚海 卷之十一 淺草さんまん寺の住持の事
○淺草、さんまん寺の住持、「求聞持」を修したりしに、或時、夜明(よあけ)て、朝日の影、明り障子にさし入(いる)る時、障子の間より、光りて落(おつ)る物、有(あり)。
取(とり)あげて見れば、「ぐんじやう」の舍利也。
其色、眞(まこと)の「へいるり」にして、奇代の物也。
傳へて所持したるを、拜(はい)したり。
かやうの利益ありしより、執筆、成就して、大冨貴(だいふうき)に至り、隱居の後(のち)も東えい御門主の命(めい)にて、羽黑山の別當に成(なり)たる人也。
[やぶちゃん注:「淺草、さんまん寺」不詳。現行、そのような名の寺は、ない。
「へいるり」不詳。「るり」は「瑠璃」だろうが、「へい」が判らぬ。「平」で尋常の瑠璃色というのであれば、わざわざ附す必要もなかろうに。]