譚 海 卷之十三 鰹にゑひたるをさます方の事 しゞみ土をさる事 鯛はんぺんの製法の事 鮹魚やはらかくにる事
○鰹にゑひたるには、枇杷(びは)の葉をかむべし。ゑひ、さむる也。
○蜆(しじみ)、數升、煮るには、餅ごめを、四、五粒、入(いれ)て、にるべし。しじみの身、一とつ、一とつ、離れて、鍋の底に、とゞまり、貝ばかり取(とり)て、すてらるゝやうに成(なる)也。
扨、身ばかりを、ぬたあへにしても、くふべし。但(ただし)、餅米なきときは、もちを入(いれ)てにたるも、同じ功なり。
[やぶちゃん注:今度、やってみよう。]
○鯛を「はんぺん」にするには、鯛壹枚に、玉子五つ、長いも壹本、もちの三文(さんもんめ)どりほどなるを、二つ、まぜて作るべし。「はんぺん」、やはらかに出來る也。
[やぶちゃん注:「三文」これは「三文目(さんもんめ)」で、当時の一文銭の三文相当で、十一・二五グラム相当。]
○章魚(たこ)を煮て柔(やはらか)にするには、ゆの實(み)と、皮をまぜて、にるべし。やはらかに、にえる也。
[やぶちゃん注:「ゆの實」「柚の實」。ここはムクロジ目ミカン科ミカン属ユズ Citrus junos に同定してよかろう。]
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