譚海 卷之十二 犬にくはれたる時の療治の事
○犬にくはれたるには、「まむし」に、くはれたる療治を用(もちひ)るよし。くはれた る所を、絲にて、かたくむすび、疵口ヘ、酢と酒とを、煮(に)かへらかして、そゝぎ、其跡へ「まちん」を、ぬり、灸を、すう[やぶちゃん注:ママ。]れば、直(なほ)る也。
又、東本願寺、地中(ぢちゆう)の寺[やぶちゃん注:同寺の中の塔頭のこと。]より出(いだ)す藥、奇妙に、なほる也。犬に、くはれて、十日ばかりの内に、此藥を用れば、一人も、怪我ある事、なし。
[やぶちゃん注:前の消毒法は、それなりの軽度の咬症による感染症にはそれなりに有効である感じはする。狂犬病の感染から発症までの潜伏期間は、咬まれた部位等によってさまざまであるが、一般的には一〜二ヶ月で、一度、発症すれば、致死率は、ほぼ百%である。
「まちん」「譚海 卷之六 武州千住驛北蒲生領の人に托せし狐の事 / 卷之八 江戶本所にて人に托せし狐にまちんをくはせし事(フライング公開二話)」の後者の「まちん」の私の注を見られたい。]
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