譚海 卷之十一 禪堂に安置する大元の事
○禪宗の本堂に「大元(だいげん)」といふ物、有(あり)。是は、釋迦如來滅後五百年に當りて、天竺にして、佛法、滅せんとせし時、此人、現じて、八萬四千の佛舍利を、世界へ投(なげ)て、此厄(やく)を救ひたるより、禪家の護法神にする事也。
夫故(それゆゑ)、右の手を額ヘかざして立(たち)たる像也。是、佛舍利の散在せるを望(のぞみ)たる體(てい)也。
此像、「大元」とばかり覺えて、いかなる人とも、しりたる人、稀也。是は、
『阿育王の化生(けしやう)成(なる)。』
由、「日用童子問」といふ書に見えたり。
[やぶちゃん注:大元」なかなか見つからなかったが、個人ブログ「matta 街の散歩…ひとりあるき」の「禅宗の伽藍神、大元の像…『北斎漫画』五編」に絵があった。
「阿育王」古代インドのマウリヤ朝の第三代の大王にして仏教の守護者として知られるアショカ王(在位:紀元前二六八年頃~ 紀元前二三二年頃)のこと。]