譚海 卷之十二 乳母幷娵めきゝの事
[やぶちゃん注:標題「敎誘」は「けういふ」と音読みし、「正しい方向に教え誘うこと・教え導くこと・教導」の意である。]
○乳母を目利(めきき)するには、齒ぐきの、くろみたる女は、あしゝ。はぐきのくろき女は、かならず、瘡毒(さうどく)、有(あり)、かやうなる女の乳、嘗(なめ)る子供は、又、必(かならず)、腫物(はれもの)わづらふ事、有(あり)。
又、耳の垢(あか)、ねばりたる女は、みな、「わきが」、有(あり)。耳の垢、ほろほろする者は、腋香(わきが)[やぶちゃん注:底本には「香」の右に補正傍注があり、『(臭)』とある。]、なき事、幾人も、こゝろむるに、皆、たがはす。
娵(よめ)など、えらぶに、先(まづ)、耳の垢を、先に、とひ聞(きく)べき事也。
[やぶちゃん注:「瘡毒」梅毒。
「耳の垢、ねばりたる」所謂「じゅく耳」で、ベトベトした湿性耳垢を指す。日本人を含むアジア人の多く(八十%程度)はカサカサの乾性耳垢であるが、欧米人は前者が多いとされる。私はカサカサだが、私の父は前者で、亡き母は父の耳掃除をさせられるのを、非常に厭がっていた。]