譚海 卷之十一 定家卿・日蓮上人・一休和尙墨蹟の事
○古筆の中(うち)、定家卿と、日蓮上人の眞跡程(ほど)、高價成(なる)物は、なし。
定家卿、小倉色紙の内、世間に、人、知(しり)て名物と稱するは、十七枚に限りたり。其餘は眞蹟の色紙といへ共(ども)、高價には、あらず。
右十七枚の内、拂(はらひ)ものに出(いづ)れば、一枚の價、金千兩づつ也。極め料(れう)も、古筆方へ百兩づつ、出(いだ)す事也。
日蓮上人は、蔓陀羅、殊に高價なり。眞蹟は稀れなるものゆゑ、若(もし)、有(ある)時は其宗門の者、いかほどにも調(ととのふ)る事故(ゆゑ)、價は際限なし。是は身延山より極(きは)め出(いだ)す也。
其次は、一休和尙の墨跡也。是は、大德寺より極め書出(かきいだ)すを、かんやうとす。