譚海 卷之十一 護摩の次第の事
○護摩の次第は、眞言宗、本式也。天台宗は、略式也。
護摩に、五穀をはじめ、珍寶・藥種などを燒(たき)すつるは、先(まづ)、はじめに、人間の愛着するものを燒すてて、自性(じしやう)の貪欲を燒亡(しやうばう)し無欲になりて、修法(しゆほふ)に懸(かか)らんためにする事也。さるが爲に、珍珠・人參のたぐひまでも、價(あたひ)を論ぜず、極上の品を用ゆるゆゑ、本式の護摩には、莫大、金子入用(いりよう)になる事なり。
常に、天台言宗などにて行ふ護摩は、本式の事に非ず、其まねをするばかりの事也。