譚海 卷之十 甲州男女密會禁止なき事
○甲州には、
「國風。」
とて、每年、端午より重陽[やぶちゃん注:旧暦五月最初の午(うま)の日から九月九日まで。]まで、男女、密會の事を、禁ぜず。
重陽、すぎても、「もらひ日(び)」とて、九月晦日(みそか)までは、此事を、なす。
みな、しかるにもあらず、ところによりて、あり。
夜陰、村の男子(なんし)、ひそかに、婦人・娘の寢所へ、かくれ入(いり)て、ふしなるゝ[やぶちゃん注:「臥し馴るる」。]事、互(たがひ)の事にて、とがむる事、なし。
その村によりて、女子(によし)の、男子のところへ行(ゆき)て、密會する事も、あり。
めづらしき事なり。
一說には、
「戰國のとき、武田信玄のゆるされけるより、はじまりたる。」
とも、いへり。
「それは、遊女なきくにゆゑ、かくのごとし。」
とも、いへり。
いかが。
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