譚海 卷之十一 閻魔天・辨財天の事(二篇カップリング)
[やぶちゃん注:本文では二篇は独立項である。しかしここは標題に従い、カップリングすることとした。]
○閻魔天と申(まふす)は、卽(すなはち)、閻魔王のことにて、天部のはじめに出(いで)て閻魔天と稱する也。辨財天は閻魔天の妹(いもと)にまします事、「最勝王經」に見えたり。閻魔天、地獄に現じては「閻羅王(えんらわう)」となり、善人を裁判して極樂へ生ぜしめ、惡人をば、地藏菩薩と現じて、救ひ給ふ、とぞ。
○辨財天のいたゞきまします白蛇(はくじや)は、「宇賀(うが)の神」と申(まふし)て、天女の夫(をつと)にましますゆえ[やぶちゃん注:ママ。]、いたゞきに捧げ給ふ也。但(ただし)、是は、本朝にて、弘法大師などの定め給ふ事にて、「最勝王經」による時は「宇賀の神」の說、なし。「十五童子」といふ事も、此邦(このくに)にて、神道をまじへて、定(さだめ)たる事也。