譚海 卷之十二 兩國になまづ魚出來し事
[やぶちゃん注:標題の「なまづ魚」はママ。]
○兩國川に、なまずの出來(いでき)たる事は、近き比(ころ)よりの事也。
「上州の方の何とやらんいふ沼に、なまず、多く、ありしが、いつの年か、水、いでて、此ぬまを押崩(おしくづ)し、川と、ひとつに成(なり)しより、なまず、流來(ながれきたつ)て、兩國へ出來たる事になりし。」
と、古き人の物語也。
[やぶちゃん注:「兩國川」隅田川の両国橋(現在より江戸時代は下流にあった)附近での呼び名。但し、江戸時代のこの附近は、高潮の際、海水が流入するところで、汽水域にはナマズ類は通常は、通年棲息は出来ないから、本当に条鰭綱新鰭亜綱骨鰾上目ナマズ目ナマズ科ナマズ属ナマズ Silurus asotus であるとすれば、弱った個体が下流域に流れてきたと考えるべきであろう。]