譚海 卷之十二 人冥加をするべき事 おこなひ正しく勤おこたるべからず事 人の賢愚相まじはる事 人の誠かくしがたき事
[やぶちゃん注:以下、底本では、短いものが、続くが、明らかに関連性が強いと私が判断したものは、かく、纏めて電子化注することとする。三つ目の「相」は「あひ」と訓じておく。]
○人も冥加(みやうが)といふ事を、しるほどになれば、大(おほい)なるあやまちは、なきなり。四十に成るまで、それしらぬ人は、一生、愚にて、暮す人と云(いふ)べし。
○わがうへの事を、あしくいふ人にも、心ひかるべからず。また、「よし。」といふ人にも、心、引(ひか)るべからず。たゞ、我(われ)、なすべき事を、眞心(まごころ)になして、おこたらず、勤(つとめ)ゆけば、後(のち)は、自ら、わが、たゞしき事は、しるゝ也。
○人のなす事の上にも、
『おろかなり。』
と、みゆる事、又、
『かしこし。』
と見ゆる事、まじるもの也。顏かたちにも、
『よし。』
と見ゆる事、
『惡(あ)し。』
と、みゆる所、まじるが如し。其人の、產(うみ)たる親の、よき所に似たる子は、少(すくな)し。
あしきところに、あやかりたるは、おほきもの也。すべて、世間の事、
『よし。』
と見ゆる事は少(すくな)く、
『惡し。』
と思ふ事の多きも、如何成(いかなる)事にや。
あめつちの、みこゝろ、しりがたきものなり。
○人のよきことも、あしき事も、しばらくはかくるゝやうなれども、誠ある人に御めみ給ふ時は、よきも、あしきも、かくす所なく、よくみゆるなり。
[やぶちゃん注:「御めみ」不詳。「御目見」(お目にかかること)か。]
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