譚海 卷之十一 永平寺開山道元禪師白山權現と和歌贈答の事
[やぶちゃん注:最後の【 】は底本では二行割注。]
○道元禪師、白山へ參詣有(あり)し時、紅葉(もみぢ)の最中(さいちゆう)成(なり)しかば、社頭にて、
「白山、何としてか、紅葉。」
と、いはれしとき、權現、形をあらはし給ひて、
「しら露のおのがすがたを其儘に
もみぢにおけばくれないの玉」
と示し給ふ、とぞ【此歌、「一休和尙の歌。」といふ說あり。「おのか心」と有(あり)。】。
[やぶちゃん注:「おのか心」「おのが心」で前書であろう。しかし、調べたところでは、これは撰者不詳の「道歌百人一首麓技折」(天保四(一八三三)年冬刊)によれば、室町中期の臨済宗の歌僧正徹書記の一首で、
眞如有緣(うえん)の心を
白露のおのが姿をそのままに
もみづに置けば紅の玉
と載る。]