譚海 卷之十二 佛像七寶を腹籠りにする事
○佛像を彫刻して、腹ごとに、七寶(しちほう)を納(をさむ)る事、あり。
珊瑚(さんご)・こはくの類(るゐ)、平生(へいぜい)、「さげもの」に用(もちひ)る結(むすび)じめの穴の有(ある)物は、用ひず、珠にして、穴なきものを、えらび、用る事ゆゑ、價(あたひ)、甚(はなはだ)、貴(たか)し。殊に、瑠璃(るり)は、得がたきものの第一也。「眞(しん)るり」といふもの、世間に、絕(たえ)てなき事故(ゆゑ)、「るり」に代(かはり)て、「びいどろ」を用ゆる事也。
[やぶちゃん注:「七寶」は仏教で貴重とされる七種の宝。当該ウィキによれば、『七種(ななくさ)の宝、七珍ともいう。工芸品の「七宝」(七寶瑠璃、七宝焼)の語源と言われている。専ら』、『工芸品の七宝をシッポウとよび、仏教の七宝をシチホウと』呼び、『サンスクリット語』では『サプタラットナ、パーリ語』では『サッタラタナ』と呼ぶ。「無量寿経」に『おいては』、「金・銀・瑠璃・玻璃・硨磲(しゃこ)・珊瑚・瑪瑙」とされ、「法華経」『においては』、「金・銀・瑪瑙・瑠璃・硨磲・真珠・玫瑰(まいかい)」と『される』とある。この内、『瑠璃は、サンスクリット語では』バイドゥーリヤ(漢音写:「吠瑠璃」(べいるり))、『パーリ語で』『ヴェルーリヤ』で、『青色の宝玉で、アフガニスタン産ラピスラズリと推定されている。後に、青色系のガラスもさすようになった』とあり、玻璃は、サンスクリット語』漢意訳で「水精」(すいしょう)、『無色(白色)の水晶、後に、無色のガラスを指す』とし、『硨磲は、シャコガイの殻、又は白色系のサンゴ』、『玫瑰は、詳細は不明であるが、赤色系の宝玉とされる』とある。
「びいどろ」ガラス。]