「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 仙柏
らかんまき 羅漢樹【閩書】
羅漢松【同】
仙柏 【俗云良加牟末木】
△按仙柏葉似狗槇而小甚細宻一叢七八十葉六月葉
間結子大如豆似小蒲萄而末圓本細長有重臺至秋
其本肥大紫熟末圓青色儼似僧形故俗名羅漢樹其
頭中有子頭以下紫肉味甜可噉夏月葉間生蛀蠧葉
毎可掃去
*
らかんまき 羅漢樹【「閩書《びんしよ》」。】
羅漢松【同。】
仙柏 【俗に云ふ、「良加牟末木《らかんまき》」。】
△按ずるに、仙柏《らかんまき》は、葉、狗槇に似て、小さく、甚だ細宻《さいみつ》、一叢、七、八十葉。六月、葉の間に、子《み》を結ぶ。大いさ、豆のごとく、小さき蒲萄(ぶだう)に似て、末《すゑ》、圓《まろ》く、本《もと》、細長く、重臺《ぢゆうだい》有り。秋に至りて、其の本、肥大(《こえ》ふと)り、紫熟《しじゆく》≪し≫、末、圓く、青色≪となりて≫、儼(さなが)ら、僧の形《なり》に似たる。故に、俗、「羅漢樹」と名づく。其の頭《かしら》の中《うち》に、子《み》、有り。頭より以下、紫肉《にして》、味、甜《あま》く、噉《く》ふべし。夏月は、葉の間、蛀(むし)、生《しやう》じ、葉を蠧(つゞ)み、毎《つね》に掃(は)き去(す)つべし。
[やぶちゃん注:これは、
裸子植物門 マツ綱マツ目マキ科マキ科マキ属イヌマキ変種ラカンマキ Podocarpus macrophyllus var. maki
である。本種については、松村忍氏のサイト「庭木図鑑 植木ペディア」の「ラカンマキ」が画像も豊富にあり、非常によい。その解説(非常に詳しい)よれば、『関東地方南部以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するマキ科の常緑樹。イヌマキの変種であり、同様に庭木や生垣として広く使われる。日本以外では中国本土や台湾に分布。本来の自生地は中国とする説があるものの、詳細は不明』。『ラカンマキの葉は長さ』四~八『センチ』メートル『で』、『イヌマキよりも短く、密生する。葉はやや白味を帯び、個体によっては葉先が黄色っぽくなることも。イヌマキとの違いは後述のとおりだが、素人では見分けるのが難しい上、ホソバマキ』( Podocarpus macrophyllus var. angustifolius )『という葉の細いイヌマキの品種もあってややこしい』。『ラカンマキはイヌマキよりも成長が緩やかで、樹形が引き締まるため、価値が高いとされる。樹高もイヌマキより低く』、五メートル『以下のものが多い。枝は直立しがちであり、庭木として使う場合はシュロ縄や針金で誘引される』。『ラカンマキの開花は』五~六月。『雌雄異株で雌の木には雌花が、雄の木には雄花が咲く。雄花は淡いクリーム色の穂状でそれなりに目立つが、雌花は小さな粒状かつ疎らに咲くため見付けにくい』。『果実はイヌマキと同じだが、雌花は少なく』、『結果は稀。繁殖は挿し木によることが多い。ラカンマキという名は実の形を、袈裟をまとった高僧(羅漢/阿羅漢)に見たてたもの。イヌマキ同様、赤い部分(果床/花托)は美味だが、黒い部分(実托)は毒性があって食べられない』。『樹皮は灰白色で、成長に伴って縦に薄く剥がれ落ちる。材は良質で、建材や器具類に使われる』とあった。なお、ウィキの「イヌマキ」を見ると、『イヌマキ(ラカンマキ)を原因とする接触皮膚炎(かぶれ)が報告されている』とあるので、注意されたい。また、同ウィキの「分類」の項は、全文がイヌマキとラカンマキの種分類の諸説を纏めているので、そちらも見られたい。
「蒲萄(ぶだう)」「葡萄」は、この漢字表記も存在する。誤りではない。
「重臺」東洋文庫の訳の割注では、『(花托)』とある。
「其の本、肥大(《こえ》ふと)り、紫熟《しじゆく》≪し≫、末、圓く、青色≪となりて≫、儼(さなが)ら、僧の形《なり》に似たる」ウィキの「イヌマキ」に載るラカンマキの、この写真が、よく様態を伝えてくれる。
「蛀(むし)」現代の日中辞書でも、第一に「木食い虫」(鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目(亜目) Cucujiformia 下目ゾウムシ上科キクイムシ科 Scolytidae のキクイムシ類)とした後、動詞として『(虫が)食う』とある。
「蠧(つゞ)み」同じく第一に「シミ」(書籍や古文書などを食害するとして嫌われる昆虫綱シミ(総尾・房尾)目Zygentomaのシミ類。但し、実際には。彼らは甚大な食害被害を起こすことは少ない。大規模に穿孔して深刻な状態を惹起するのは多食亜目ナガシンクイ上科シバンムシ科 Anobiidaeに属するシバンムシ類である)とした後、動詞として『虫が食う』とある。]
« 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 柀 | トップページ | 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 椹 »


