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2024/04/27

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 樅

 

Momi

 

もみ       和名毛美

 

【音聰】

 

ツヲン

 

本草綱目松葉柏身者樅也

△按樅其樹皮有橫理而與栢檜不同其葉頗似榧其實

 似松梂而細長其中子亦如松子其材作板用爲櫃箱

 性不堪水濕故不ㇾ宜爲柱

髣髴樅 其材肌理不𭓽如疥癬痕人訝爲非樅

 

   *

 

もみ       和名「毛美《もみ》」。

 

【音「聰《ソウ》」。】

 

ツヲン

 

「本草」、『松の葉、柏の身《み》なる者は樅《》なり。』と。

△按ずるに、樅、其の樹、皮、橫理(《よこ》すぢ)有りて、栢(かし)・檜(ひのき)と同じからず。其の葉、頗《すこぶ》る榧(かや)に似、其の實、松の梂(ちゝり)に似て、細長く、其の中の子《み》、亦、松子《まつのみ》のごとし。其の材、板に作り、用ひて、櫃(ひつ)・箱と爲《な》す。性《せい》、水濕《すいしつ》に堪へざる故に、柱と爲《す》るに、宜《よろ》しからず。

 

[やぶちゃん注:「本草綱目」の引用は、前の「本草綱目」「卷三十四」の「木之一【香木類三十五種 内附六種】」の巻頭を飾る「栢」の中の「集解」の終りにあるものを引用したもので(「漢籍リポジトリ」のここのガイド・ナンバー[083-2a]の下四行目)、「本草綱目」には、そもそも「樅」は立項されていないのである。いや! そもそも、本邦の知られる「樅」、

裸子植物門マツ亜門マツ綱マツ亜綱マツ目マツ科モミ属モミ Abies firma は日本特産種であって中国には分布しない

のである。当該ウィキによれば、『日本特産種で、日本に自生するモミ属で最も温暖地に分布し、その北端は秋田県、南端は屋久島に達する』。『本州(秋田県以西)、四国、九州の屋久島まで分布する』。『モミは、モミ属の樹木としては、最も温暖な地域に分布域をもつ種で、日本の中間温帯の代表的な樹種の一つである』。『モミの分布は太平洋側に偏っており』、『日本海側には局所的に分布が知られるのみである。モミを欠く日本海側においてはスギ』(マツ亜綱ヒノキ目ノキ科スギ亜科スギ属スギ Cryptomeria japonica )が、『その位置に出現するという』。『スギ、特に日本海側(裏日本)に分布するウラスギ(裏杉)と呼ばれる系統は』双子葉植物綱ブナ目ブナ科ブナ属ブナ Fagus crenata とともに『多雪環境に極めて適応していることで知られる』とあるのである。『モミの材は白くてやわらかく、加工が容易という特徴があり』、『天井板、腰板などの建築材、高級な棺、卒塔婆に使われる』。『蒲鉾の板は、伝統的にモミ類が使われる』。『また』、『パルプの原料にもなる』とあった。

 さて。では、中国の「樅」とは何か?

 それについては、東洋文庫の後注に、『中国語の「樅」は、バビショウのこと。日本のモミではないとされる』とあるのである。

 この「バビショウ」とは、「馬尾松」で、

マツ属バビショウ Pinus massoniana

である。邦文記事では、中国語の「樅」がモミとは異なったバビショウであることを記した記事を見出せなかったが、中文ウィキの「馬尾松」を見ると、中文異名に『青松、山松、樅松(廣東、廣西)』(☜)『松柏』、『或』、『臺灣赤松』とあるのを見出せたので、間違いない。当該の日本語のウィキによれば、『中国の南部を中心に広く分布する松で、針状の葉が』十五~二十センチメートルと『長くなり、ウマの尾を連想させるために、中国ではこの名が付いている。和名は中国語の漢字を音読みしたもの。アカマツと同じ二葉松であり、日本が台湾を統治した際によく目にしたため、タイワンアカマツ(台湾赤松)とも呼ばれる』。『中国の河南省から江西省、貴州省、海南省までの範囲の低山に広く分布する。特に福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖南省の山地に密集している。台湾にも分布し、ベトナム北部から中部にかけても分布する』。『樹高は』二十五~四十五メートル『程度。樹皮は灰褐色で、厚い』。『中国では、松脂を採取する木として重要であり、植林も計画的に行われている。植林後、約』十五『年経つと、幹が松脂の採取が可能な直径に育つ』。『松脂を採取した後の木材は、枕木などの用途に用いられるほか、粉砕して、製紙用のパルプに利用されることが多い』とある。逆に、バビショウは日本には自生しないのである。

 ともかくも、この項は、「本草綱目」の引用が無効となり、良安の附説は本邦の樅(もみ)の木についての解説となる、イタい一項となってしまっているのである。

「栢(かし)」前の「かえ 柏」を参照されたい。

「檜(ひのき)」ヒノキ科ヒノキ属ヒノキ Chamaecyparis obtusa

「榧(かや)」裸子植物門マツ綱マツ目イチイ科カヤ属カヤ Torreya nucifera

「梂(ちゝり」球果。「松ぼっくり」のようなものと考えればよい。]

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