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2024/04/03

柴田宵曲「古句を觀る」正規表現版電子化注 / 「春」(8)

 

   うぐひすや鞍の內ほす朝日影 遲 候

 

 緣側などであらうか、鞍の內側を日に當てる爲に干してある、どこかで鶯が啼いてゐる、といふ靜な朝の光景である。

 單に鞍を干すといふのでなしに、「鞍の內ほす」といふのが面白い。早春の朝の日影だけに、うすら寒い感じがする。塗鞍の日を受けて光る樣なども想像される。鶯と鞍との配合も、一の取合に過ぎぬやうであつて、決してさうではない。季節の感じが的確に現れた句である。

[やぶちゃん注:今朝、朝四時に起床したが、外面(そとも)で、頻りに鶯が鳴いていた。今年に入って最も囀りを聴いた朝であった。]

 

   うぐひすや有明の燈のありやなし 舍 羅

 

 鶯といふ鳥は早朝に來て啼くことが多いようである。夜を徹して机に向つてゐる時など、室內は燈火がかんかんついてゐるので、天明の近づゐたことも知らぬうちに、思ひがけず鶯の聲を耳にすることがある。しずかな曉闇を破つて、朗かな鶯の聲を聞く每に、「鶯の曉寒し」という其角の句を、今更のやうに思ひ出す。

 この句の作者は燈を挑げて起きてゐるわけではない。終夜點して置く灯[やぶちゃん注:「ひ」。次も同じ。]を有明の灯といふ。昔は固より、明治のラムプ時代にも、古風な家では行燈を有明の灯に用いてゐた。「ありやなし」は「ありやなしや」で、蕪村の「若竹や橋本の遊女ありやなし」なども同意であらう。鶯に對する曉の情といふべきものを捉へた句である。「有明の燈のありやなし」と續くあたり、歌ならば調子を取つたといふところであるが、この句はたゞ自然にそうなつたと見た方がいいかも知れない。

[やぶちゃん注:「鶯の曉寒し」四十七歳で他界した宝井其角の辞世の句で、

   *

   鶯の曉寒しきりぎりす

   *

である。彼の逝去は宝永四年二月三十日(一七〇七年四月二日)、或いは、二月二十九日(四月一日)とされる。

「若竹や橋本の遊女ありやなし」蕪村六十歳の安永四(一七七五)年の作。「文化遺産オンライン」の蕪村筆になる「若竹図」の解説に、『橋本は、淀川の左岸、京都山崎の対岸にあり、竹の名所であると同時に、淀川を往来する舟の寄港地であった。またこの地は、遊女町が開けていた』とある。]

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