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2024/05/29

譚 海 卷之十五 諸病妙藥聞書(22) / 「譚海」本文~了

○瘡毒の藥。

 白鮮皮(はくせんぴ)・防風・荆芥・木瓜(ぼけ)・薏苡仁(よくいにん)・木通(あけび)・金銀花・苦參(くじん)・龍膽草(りゆうたんさう)・唐皂角子(たうさうかくし)・澤潟(おもだか)・唐大黃(たうだいわう)【各五匁。】・茯苓・川芎・黃連・黃柏・杜仲・車前子【各一匁七分。】・連翹・生地黃(なまじわう)・黃笒(わうごん)・山巵子(くちなし)・當歸・甘草【各七分。】

 已上、廿四味を七貼(てう)にして、一貼へ、山歸來、八十目宛(づつ)、加へ、七日、飮(のむ)べし。

痼疾の瘡毒、耳など聞えざるものにても、治する也。尤(もつとも)、大貼にして用(もちゆ)べし。

山歸來は、一番、二番、三番けづり迄、有(あり)。下直(げぢき)の品、よし。禁物、あぶらこき肴(さかな)を、いむ。此藥、妙也。

[やぶちゃん注:「瘡毒」梅毒。

「白鮮皮」ムクロジ目ミカン科ハクセン属ハクセン Dictamnus albus の根皮を基原とする生薬で、当該ウィキによれば、『唐以降の書物に見られ』、『解毒や痒み止めなどに用いられていたが、現在は』殆んど『用いられない。ヨーロッパでは、皮膚病の薬や堕胎薬として用いられていた』とある。

「薏苡仁」単子葉植物綱イネ目イネ科キビ亜科ウシクサ連ジュズダマ属ジュズダマ変種ハトムギ  Coix lacryma-jobi var. ma-yuen の皮を剥いた種子を基原とする生薬。当該ウィキによれば、『滋養強壮、いぼ取りの効果、利尿作用、抗腫瘍作用(消炎)などがあるとされる』とある。

「苦參」マメ目マメ科マメ亜科クララ連クララ属クララ Sophora flavescens の根又は外の皮を除いて乾燥したものを基原とする生薬。当該ウィキによれば、『利尿、消炎、鎮痒作用、苦味健胃作用があ』る、とする。なお、『和名の由来は、根を噛むとクラクラするほど苦いことから、眩草(くららぐさ)と呼ばれ、これが転じてクララと呼ばれるようになったといわれる』とあった。

「龍膽草」リンドウの異名。]

 

○又、一方。

 山歸來・忍冬・土骨皮【各六匁。】・桔梗・大黃・黃連【各一匁。】・甘草【五匁。】

 右、七味、是は輕き瘡の藥也。

 

○又、一方。

 山歸來【四匁。】・防風・木瓜・木通・薏苡仁・白鮮皮・金銀花【各五分。】・皂角子【四分。】

 已上、八味。

 

○瘡毒痼疾、ほねがらみに成(なり)たるを、治す。

 此藥、奇々、神の如し。見聞して覺たる所也。牛込原町若松町、御旗組同心衆今井利助殿より出(いづ)る。一劑代金、一兩二步也。なほり、こじれたる淋病抔に、半劑、服して功、有(あり)。若(もし)此藥、用ひたくば、金子、持參(もちまゐ)れば、製藥に取(とり)かゝり、四、五日過(すぎ)て、出來る也。禁物、甚(はなはだ)多し。乍ㇾ去(さりながら)、鼻の缺(かけ)りたるも、此藥を用(もちゆ)る時は、元の如くに、直(なほ)る程の奇方也。

[やぶちゃん注:梅毒で鼻が欠けた場合、直るというのは、望めない。]

 

○おらんだ水藥(みづぐすり)。

 右の藥、「かさ」に用(もちゆ)る事、有(あり)。必(かならず)、用べからず。害をなす事、至(いたつ)て、深し。此藥、用(もちい)て後は、外に治すべき方(はう)有(あり)ても、きかず、愼(つつしみ)恐るべし。

 

○病犬にかまれたるには、

 右藥、賣(うる)所、淺草門跡、前橋の際(きは)、藥店に有(あり)。一貼、代金、一步也。此藥を服すれば、二度(ふたたび)起る事、なし。但(ただし)、此藥、用(もちい)る時は、病氣、つよく起(おこり)て、死(しな)んとするほどに有(ある)也。二、三日、過(すぐ)れば快氣する間、驚(おどろく)べからず。

 

○又、一方。

 「とこゆ」【柚の類也。】、「わさびおろし」にて、すり、疵口を、水にて、能(よく)、洗(あらひ)て、すり、つくれば、疵口より、水、出(いづ)る。しばらく置(おき)て、又、すり付(つく)べし。いくたびも如ㇾ此すれば、よく直る也。

[やぶちゃん注:「とこゆ」果実が小形で早熟性のムクロジ目ミカン科ミカン属ハナユCitrus hanayu 。異名を「ハナユズ」「一才ユズ」等とも呼ぶ。]

 

○又、一方。

 紫蘇(しそ)の葉を、もみて、汁も葉も共に、ぬり付(つく)べし。

 

○馬、又は、犬などに、かまれたるには、

 「さゝげ」のみを、かみくだきて、付(つく)べし。すべて、獸(けもの)に、くはれたるには、よく、功、有(あり)。

 

○「まむし」にさゝれたるには、

 樟腦一味、「みゝづ」に、すりまぜて、付(つく)べし。

[やぶちゃん注:「樟腦」本日、公開した『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 樟腦」』を参照されたい。]

 

○又、一方。

 「螢火丸」を、かみくだき、「つばき」にて、ぬり付(つけ)て、よし。

[やぶちゃん注:「螢火丸」「京都産業大学」広域サイト内のここにある「蛍火武威丸(包紙)」か。『代々』、『陰陽頭をつとめた土御門家が製造していた薬』とある。]

 

○又、一方。

 「なめくじり」を付(つく)れば、立所(たちどころ)に治する也。

 

○又、一方。

 年始に門松に用(もちい)たる「くし柹(がき)」を、かみくだき、付(つけ)て、よし。

 

○又、一方。

 朝がほの葉を、つねに、「ごまの油」に、ひたし置(おき)、それを、「まむし」にさゝれたる時に付(つく)れば、卽功、あり。

 

○又、一方。

 疵口へ、「とりもち」を、ぬりて、膝の「ふし」より下を、土の中へ、しばし埋(うづめ)て居《を》れば、去る事、妙也。

[やぶちゃん注:河豚中毒者を地中に埋めて治すのと兄弟のトンデモ療治だな。]

 

○「まむし」を、よくる守札。

 右、上杉家中志津田孫兵衞と云(いふ)人より出(いづ)る。每年正月十六日・七月十六日、兩度也。禮物(れいもつ)、百錢、持參する也。其外の日、所望すれば、金子百疋なり。此符、神驗(しんげん)ある事、筆上に、つくしがたし。

 

○鼠に、くはれたるには、

 「しきみ」の「枯(かれ)ば」を細末にして、せんじて、痛所を、あらひ、又、一ぷくほど、飮(のみ)て、よし。

[やぶちゃん注:危険ですな、シキミは全草が有毒ですから。]

 

○又、一方。

 日本橋平松町、井上文平、所に、あり。「つて」を賴(たのみ)て、もらふべし。

 

○蜂にさゝれたるには、

 芋の葉にても、「くき」にても、すりつくれば、痛(いたみ)、忽(たちまち)に止(とま)る也。生(なま)の「里いも」を付(つけ)ても、よし。

 

○「あり」を、さる方。

 ありのかよふ道へ、「熊のゐ」を、水にて、とき、ぬりて、よし。

 

○「のみ」を、さる方。

 菖蒲(しやうぶ)にて、「むしろ」を、あみて、敷(しき)てねる時は、のみ、よらず。

 

○虱(しらみ)を、さる方。

 「朝がほ」の葉を、湯に、わかしたるにて、洗濯すべし。

 

○蚊いぶしの方。

 「べぼう」と云(いふ)木を、蚊遣に、すべし。

 右數寄屋河岸、さつま物問屋に、あり。

[やぶちゃん注:「べぼう」「譚 海 卷之十三 べほうの事」の私の注を見られたい。]

 

○又、一方。

 蓬(よもぎ)を、陰ぼしにして、蚊遣にすべし。

 

○諸蟲、「あんどん」へよらざる法。

 萱(かや)の實、一つ、つるし置(おく)時は、諸蟲、燈へ、よる事、なし。

[やぶちゃん注:この「萱」は、恐らく「大麻草」、バラ目アサ科アサ属 Cannabis のそれであろう。]

 

○魚を、いかす方。

 死なんとする鯉・鮒のたぐひ、一夜、水しだりを、しかけて、其水へ、はなち、水の音を、きかするやうにすべし。

 

○百草黑燒の方

 五月五日、百種の草を採集(とりあつめ)て、其夜、露を、うけて、翌日より、每日、炎天に、ほし、かためて、後、黑燒にすべし。

 

○病人、生死を見わくる藥。

 辰沙・五靈脂(ごれいし)【各三匁。】・銀硃【一匁五分。】・麝香【三分。】・ひまし【三匁。】・雄黃【五匁。】・巴豆

 已上、七味、右、端午、淨室(じやうしつ)に入(いり)て、午(うま)のとき、細末して、磁器に貯(たくは)ふ。但(ただし)、婦人の手に觸(ふる)べからず。此藥用たる跡、川へ、ながすべし。右の藥、「ふき」の賞(み)の大さに、まろめ、病人の印堂(いんだう)の穴に付(つけ)て、線香一本焚(たく)ほど、置(おき)て、此藥を取(とり)すつべし。其跡、赤く、はれあがりたる時は、重病とても、蘇生す。

[やぶちゃん注:本篇を以って、「譚海」は終っている。後は、津村の後書(漢文)と、本底本冒頭にある「柳主人」なる人物の「序」のみである(この「序」を最初に配さなかったのは、竹内利美氏の冒頭解題に、この「序」は筆者した際に「柳主人」 が『勝手に書き加えたもののようである』とあったからである)

「五靈脂」中国に棲息する哺乳綱齧歯目リス亜目リス科リス亜科 Pteromyini 族ムササビ属Petaurista の糞を基原とした生薬。「金澤 中屋彦十郎藥局」公式サイト内のこちらによれば、『成分としてはビタミンA類、その他で』、『炒りながら』、『酢や酒を加え、乾燥したものがよく用いられる』。『かつては解毒薬として蛇、ムカデ、サソリ等に咬まれたときに外用した』とある。

「銀硃天然の辰砂に硫黄を混ぜたニカワを練り合わせて作った朱w「銀朱」と呼ぶが、これか。

「ひまし」「ひまし油」か。漢字では「篦麻子油」と書く。「篦麻」はトウダイグサ目トウダイグサ科トウゴマ(唐胡麻)Ricinus communis のことを指し、その種「子」から採取する植物油の謂いである。但し、その強い毒性は必ずしもよく認識されていないと思うので(ごく最近、本邦で夫をこれで殺害しようとした妻が逮捕されたニュースを見た)、ウィキの「トウゴマ」から引いておく。『種子から得られる油はひまし油(蓖麻子油)』が知られるが、この『種にはリシン(ricin)という毒タンパク質がある』。『学名の Ricinus はラテン語でダニを意味しており、その名のとおり果実は模様と出っ張りのため、ダニに似ている。トウゴマは栽培品種が多くあり、その植生や形態は個体によって大きく変化し、あるものは多年生で小さな木になるが、あるものは非常に小さく一年生である。葉の形や色も多様であり、育種家によって分類され、観葉植物用に栽培されている』。『一属一種。原産は、東アフリカと考えられているが、現在では世界中に分布している。公園などの観葉植物として利用されることも多い』。種子は四〇~六〇%の『油分を含んでおり、主にリシノリン』『などのトリグリセリドを多く含むほか、毒性アルカロイドのリシニンも含む』。『トウゴマの種は、紀元前』四千年頃に『つくられたエジプトの墓所からも見つかっている。ヘロドトスや他のギリシャ人旅行者は、ひまし油を灯りや身体に塗る油として使用していたと記述している。インドでは紀元前』二千年頃から『ひまし油を灯りや便秘薬として使用していたと記録されている。中国でも数世紀にわたって、内用・外用の医薬品として処方されている。日本では、ひまし油は日本薬局方に収録されており、下剤として使われる。ただし、猛毒であるリシンが含まれているため、使用の際は十分な注意が必要である。特に妊娠中や生理中の女性は使用してはならない。また、種子そのものを口にする行為はさらに危険であり、子供が誤食して重大事故が発生した例もある』とする。ウィキの「リシン」によれば、リシンは『猛毒であり、人体における推定の最低致死量は』体重一キログラ当たりたったの〇・〇三ミリグラムで、毒作用は服用から十時間後程度で発生、その機序は『たんぱく質合成が停止、それが影響していくことによる仕組み』拠るとある。『リシン分子はAサブユニットとBサブユニットからなり、Bサブユニットが細胞表面のレセプターに結合してAサブユニットを細胞内に送り込む。Aサブユニットは細胞内のタンパク質合成装置リボゾームの中で重要な機能を果たす28S rRNAの中枢配列を切断する酵素として機能し、タンパク質合成を停止させることで個体の生命維持を困難にする』。『吸収率は低く、経口投与より非経口投与の方が毒性は強いが、その場合の致死量はデータなし。戦時中はエアロゾル化したリシンが、化学兵器として使用された事もある。また、たんぱく質としては特殊な形をしているため、胃液、膵液などによって消化されず、変性しない』。また、『現在、リシンに対して実用化されている』科学的に有効と断定される『解毒剤は存在しない』とある。

「印堂」眉間の中央部分にあるツボの名称。]

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