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2024/05/01

譚 海 卷之十五 諸病妙藥聞書(7)

○顏のきめを、こまやかにして、色を白くするおしろいの方。

 楊梅皮(やうばいひ)・桃仁・丁子・輕粉(けいふん)、右、四味、各五匁。石灰、面胡ふん、右、二味、各十匁。但(ただし)面胡粉(めんこふん)は、京橋柳屋と云(いふ)に有(あり)。

[やぶちゃん注:「楊梅皮」山桃(ブナ目ヤマモモ科ヤマモモ属ヤマモモ Morella rubra )の皮。本州中部以南・朝鮮半島・台湾・中国などに分布する。山中で多く実をつけることから、「山百々」と呼ばれ、それが和名になった。夏に果実の紅熟したものを「楊梅」(ヨウバイ)、七~八月頃に樹皮を剝いで、天日乾燥したものを「楊梅皮」と呼んで、孰れも生薬とする。

「桃仁」桃の実の核(たね)。

「輕粉」水銀・食塩・にがり・赤土を捏ね合わせ、加熱して得られた昇華物で、本質は塩化第一水銀(甘汞(かんこう))。伊勢地方で十三世紀頃から製造された。利尿・抗菌作用があり、梅毒にも効くとされた。水に溶け難く、毒性は弱い。「水銀粉」(はらや)・「伊勢おしろい」等とも言われた。

「面胡ふん」日本画の重要な白色顔料。「胡」の字から、大陸由来の顔料であったと考えられている。本来は塩基性炭酸鉛(鉛白・唐土・シルバーホワイト・フレークホワイト)を指していたが、その後、本邦では「白亜」や「白土」などの白色顔料の総称として「胡粉」の言葉が当てられていたらしい。鉛由来・土由来・貝殻由来の胡粉が存在した。明治以降の日本画では、主に貝殻(カキ・ホタテ・ハマグリ)等の炭酸カルシウム由来の白色顔料の一般名称となっている。上質のものは、不純物が少ない良質の石灰岩を焼成し、白色度の高めて後、粉とする。]

 

○頭痛を治する方、「かた」のはりにも、よし。

 大黃(だいわう)【酒製也。】・黃連(わうれん)・川芎(せんきゆう)・茯苓、右、四味、目方、各、等分。甘草、少し、加ふべし。但(ただし)、「煎藥(いりぐすり)きらひ」には、「こぐすり」にして、用(もちゆ)べし。平生、用るときは、頭痛の根を、切る也。

[やぶちゃん注:「大黃」ダイオウ。タデ目タデ科ダイオウ属 Rheum の根茎の外皮をり去って乾燥したもので、健胃剤・潟下剤とする。「唐大黄」と「朝鮮大黄」との種別がある(底本の竹内利美氏の後注に一部を拠った)。

「黃連」既出既注

「川芎」底本の竹内利美氏の後注に、『センキュウ。セリ科の草木。その根茎が頭痛などの薬剤になる。薬用として栽培された』とある。当該ウィキによれば、『中国北部原産で秋に白い花をつけるセリ科の多年草センキュウ Cnidium officinale の根茎を、通例、湯通しして乾燥したもので』、『本来は芎窮(きゅうきゅう)と呼ばれていたが、四川省のものが優良品であったため、この名称になったという。日本では主に北海道で栽培される。断面が淡黄色または黄褐色で、刺激性のある辛みと、セロリに似た強いにおいがある。主要成分としてリグスチリドなどがあげられる』。『現在の分析では鎮痙剤・鎮痛剤・鎮静剤としての効能が認められ、貧血や月経不順、冷え性、生理痛、頭痛などに処方されて』おり、『漢方では』「当帰芍薬散」に『配合され』、『婦人病』、所謂「血の道」の『薬として』、『よく用いられる』とあった。

「茯苓」は菌界担子菌門真正担子菌綱ヒダナシタケ目サルノコシカケ科ウォルフィポリア属マツホド Wolfiporia extensa の漢方名。中国では食用としても好まれる。詳しくは「三州奇談卷之二 切通の茯苓」の私の冒頭注を参照されたい。]

 

○又、一方。

 南天の枝を、鰹節のごとく、けづり、其けづりたるを、枕の「しん」にして、ぬるときに、用(もち)うれば、年をへて、おこらず。

 

○又、一方。

 「わかめ」を、せんじ、髮を、あらひて、よし。

 

○又、一方。

 右は、「びいどろ」に入(いれ)たる「かぎぐすり」にて、佐竹壹岐守御内(おんうち)、吉田半八と云(いふ)人より、出(いづ)る。「びいどろ」代とも二百文、但(ただし)、男は、左の鼻へ、あてて、かぐべし。女は、右の鼻へ、あてて、かぐ也。小兒男子は、左の耳の穴、女子は、右の耳の穴へ、あてて、かがしむべし。

 

○「髮はへぐすり」。

 蝙蝠(かはほり)の黑燒、ごまの油にて、とき、ひた物(もの)、付(つく)べし。

[やぶちゃん注:「ひた物」「直物・頓物」で、ここは副詞。「専ら、そのことに集中するさま」で「ひたすら」の意。]

 

○又、一方。

 うぶ髮(がみ)・はくや[やぶちゃん注:底本では「く」の右に編者補正注で『(ら)』とある。]・松やに・鼠のふん・へそのを、右、黑僥にして、ごまの油にて、付(つけ)て、よし。

[やぶちゃん注:「うぶ髮」産毛(うぶげ)・和毛(にこげ)。

「はらや」既出既注であるが、誤字なので、再掲しておく。「輕粉」で「けいふん」「はやや」等とも呼んだ「粉白粉」(こなおしろい)・伊勢白粉のこと。白粉以外に、顔面の腫れ物・血行不良及び腹痛の内服・全般的な皮膚病外用薬、さらには梅毒や虱の特効薬や利尿剤として広く使用された。伊勢松坂の射和(いざわ)で多く生産された。成分は塩化第一水銀Hg₂Cl₂=甘汞(かんこう)であり、塗布でも中毒の危険性があり、特に吸引した場合、急性の水銀中毒症状を引き起こす可能性がある。現在は使用されていない。]

 

○髮の「つや」をいだす藥

 桐の木を、せんじて、あらふべし。くろみ、いづる也。

 

○又、一方。

 くるみの油にて、すく時は、「つや」、よく出(いづ)る也。

 

○髮をあらはずして、「あか」を、おとす方。

 かうほん・びやくし、二味、粉にして、髮へ、もみつけ、よくよく、くしけづり、すき入れば、「あか」、よく落(おつ)る也。髮を、度々(たびたび)あらへば、「つや」、あしく成(なる)もの也。

[やぶちゃん注:「かうほん」底本では右に編者補正注で『(槀本)』とある。これは漢方生薬名「コウホン」(藁本)。セリ目セリ科セリ亜科マルバトウキ属コウホン Ligusticum sinense などの根や根茎を乾燥したもので、去風湿・止痛などの効能があり、頭痛・腹痛・鼻炎。皮膚掻痒症などに用いられる。「コウホン」とよく似た名の生薬に「ワコウホン」(和藁本)があるが、これは同じセリ亜科ヤブニンジン属ヤブニンジン Osmorhiza aristata の根や根茎を使用したものである。

「びやくし」底本では右に編者補正注で『(白芷)』とある。やはり漢方生薬で、セリ亜科シシウド属ヨロイグサ Angelica dahurica の根。消炎・鎮痛・排膿・肉芽形成作用があり、皮膚の痒みをとる。日本薬局方にも記載されている。]

 

○「かた」の、はりたるとき、 

 右の煎藥、頭痛の所に有(あり)、見合(みあはせ)、用(もちゆ)べし。

 

○一方【「竹林派」弓術の傳書にあり。】。

 阿膠(あけう)一味、生姜のしぼり汁を、あつく、せんじたる中へ、かきまぜ、夫(それ)を、鳥のはねにて、せなかの、いたむ所へ、ぬり、半紙を、ふたにしておけば、ひつたりと付(つく)也。扨(さて)、小袖にても、きて、をれぱ、藥をぬりたる所、殊外、ほめき、熱し、こらへがたきほど也。かたのはり、よく、なほりて、翌日は、半紙、自然(おのづ)

と、はげ落(おつ)る也。

 但(ただし)、阿膠を、もちひず、生姜の「しぼりしる」ばかりを、あたため、ぬる事も、よし。

[やぶちゃん注:「阿膠」(あきょう)は、山東省東阿県で作られる上質の膠(にかわ)を指し、接合剤のほか、漢方薬などにも用いる。]

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