譚 海 卷之十五 諸病妙藥聞書(13)
○痢病の藥
「かたつぶり」を、「みそしる」に、せんじて、その汁を飮(のむ)べし。
[やぶちゃん注:「痢病」の解説. 激しい下痢を伴う病気。赤痢・疫痢の類。痢疾。
「かたつぶり」前回の「なめくじり」同様に、危険である。腹足綱有肺類 Pulmonata のカタツムリ類に寄生する寄生虫は非常に危険で、ヒトに日和見感染して脳に入り込んだりした場合には、重い症状を呈することがある。事実、現在では、幼稚園・小学校に於いてカタツムリには絶対に素手で触らないように指導されている。ここでは、煎ずるとするが、そもそも、その前に、生きたカタツムリを獲り、素手で触れるはずであるが、その瞬間、皮膚を通じて、寄生虫は体内に侵入するからである。]
○又、一方。
寒中、「むぐらもち」の「黑やき」を服して、よし。
[やぶちゃん注:「むぐらもち」哺乳綱真無盲腸目モグラ科 Talpidae の古名。]
○又、一方。「十帖散」と號す。
山藥(さんやく)十匁、蓮肉(れんにく)七匁、白米【一合】、炒(いる)。
右三味、細末にして、「さとう[やぶちゃん注:ママ。]」を、少し、くはへ、「こがし」のごとくして、ふくすべし。たゞし、「だん子(ご)」に、まろめ、用(もちゆ)るも、よし。
[やぶちゃん注:「山藥」[やぶちゃん注:底本の竹内利美氏の後注に、『ヤマイモの乾粉』とある。
「蓮肉」漢方では、通例、双子葉植物綱ヤマモガシ目ハス科ハス属ハス Nelumbo nucifera の内果皮の付いた種子で、時には、胚を除いたものを基原とする。]
○又、一方。
かうじ町、植村兵部少輔樣、家方(かはう)のくすり、有(あり)。もとめて、飮(のむ)べし。「りびやう」流行のとき、決して、わづらふ事、なし。
○又、一方。
古生姜根(ふるしやうがのね)、極上の茶、二味、目方、各(おのおの)、等分。
右、つねのごとく、せんじ、服(ふくす)べし。
○陰所(いんしよ)の腫(はれ)たると、「きん」の、はれたる時などには、
芭蕉の葉にて、つゝみ置(おく)べし。包(つつみ)かふる度(たび)ごとに、「はれ」を減ずるなり。三日ほどには、もとのごとくになるなり。「ばせう」にて、水氣(すいき)をとる故、殊の外、しめりて、あり。衣しやうの、ぬれぬ「やうい」、すべし。
○陰囊、かゆきとき、又、一方。しきみの葉を煎(せんじ)、洗(あらふ)べし。石菖の根を、きざみて、せんじ、あらふべし。端午に用(もちい)たる「せうぶ」を、たくはひ置(おき)て、あらふも、同事(どうじ)に治(なほ)る也。
[やぶちゃん注:「石菖」既出既注。単子葉植物綱ショウブ(菖蒲)目ショウブ科ショウブ属セキショウ Acorus gramineus のこと。
「せうぶ」ショウブ属ショウブ Acorus calamus 。]
○婦人、陰門の、かゆきには、
大根の葉の、ほしたるを、きざみ、鹽を、くはへ、せんじ、洗(あらふ)べし。
○男女とも、まへを、怪我したを、治するには、
「萱(かや)めうか」【「かやわら」の中に生ずるもの。鹿の小便より生ずるもの也。】、
右、黑やきにして、たくはへおき、疵あるとき、ぬり付(つくる)べし、奇妙に治す。
[やぶちゃん注:「萱めうか」不詳。「鹿の小便より生ずる」というのは、明らかに「化生」(けしょう)であって基原動物を探す役にはたたない。]
○婦人まへの痒(かゆみ)には、
あいろう・黃柏、右、二味、目方、各、等分。
黑豆を、せんじて、その汁に和して、ぬり付(つくる)べし。
[やぶちゃん注:「あいろう」「藍蠟」だが、歴史的仮名遣は「あゐらう」が正しい。藍汁を作る時に生じた藍の泡を乾かして、棒状にしたもの。蠟のような形状になる。絵の具に使用した。現在では、古い藍布を、苛性ソーダ・飴・石灰などを加えた液の中に入れ、煮出し、その藍分を棒状にして作ることが多い。「藍棒」「藍蠟墨」「藍墨」「青墨」等とも呼ぶ。
「黃柏」ムクロジ目ミカン科キハダ属キハダ Phellodendron amurense の黄色い樹皮を乾した漢方生薬。]
○婦人、「まへ」の疵には、
ふるき「せつた」の皮を、「くろやき」にして、「ごまの油」にて、付(つく)べし。
[やぶちゃん注:「せつた」「雪駄」。]
○血道藥(ちみちのくすり)。
牛膝(ごしつ)【和名「ごまのひたひ」と云(いひ)、「犬たで」の中に生ずる物なり。】
土用に入(いり)、十日ほど過(すぎて)、取(とり)て、「陰ぼし」にして、其のち、黑やきにして、酒に、とき、用(もちゆ)べし。又、酒に、むして後(のち)、「陰ぼし」にすれば、酒にて、とくに、をよばず[やぶちゃん注:]、「くろやき」を、白湯(さゆ)にて用べし。全體、甲州流、金瘡(きんさう)のくすりなれば、「切きづ」に用(もちい)ても、よし。
[やぶちゃん注:「血道」女性特有の病気の総称。産褥(さんじょく)時・月経時・更年期などに、血行不順から起こる頭痛・のぼせ・めまい・精神不安定などの諸症状、及び、子宮疾患などを指す。「ちのやまい」「ちのみち」とも言う。
「牛膝」『和名「ごまのひたひ」と云(いひ)、「犬たで」の中に生ずる物なり』:これは、ナデシコ目ヒユ科 Amaranthoideae亜科イノコヅチ属イノコヅチ変種イノコヅチ Achyranthes bidentata var. japonica の根を乾燥させた生薬の漢名。ウィキの「イノコヅチ」によれば、『利尿、強精、通精、通経薬とする』。『また』、『俗間では堕胎薬としても使われたこともあったと見られているが、これら有効成分はよくわかっていない』、『牛膝は、秋に根を掘り採って天日乾燥して調製される』。『民間療法では、生理痛や関節痛に、牛膝』一『日量』五『グラムを』四百『ccの水で煎じて』、三『回に分けて服用する用法が知られている』。但し、『妊婦への服用は禁忌とされている』とある。ただ、津村の言うように、ナデシコ目タデ科ミチヤナギ亜科 Persicarieae 連Persicariinae亜連イヌタデ属イヌタデ Persicaria longiseta の群落に中に限定的に植生するというわけではない。しかし、イヌタデの群落とイノコヅチ類は、共通する地相に群落を作ることは、しばしば見られるものではある。]
○婦人、血をめぐらす藥。
桃の實を、いくらも、「かなづち」にて、くだき、中にある仁(じん)ばかりを、一升ほど、「すりばち」へ入(いれ)て、すりくだき、それを、德利へ、つめて、かたく、口を、ふうじ、釜の中へ水を入(いれ)、燒(やき)たて、德利を、釜の中にて、湯煎(ゆせん)にする事、二時(ふたとき)ばかり。さて、德利を、とりいだし、德利を打(うち)わりて、桃の仁を、とりいだせば、伽羅(きやら)のあぶらのごとく、かたまりて、あり。少しづつ、每日、服すべし。上戶(じやうご)は酒、下戶(げこ)は白湯(はくたう)にて、用(もちゆ)べし。
[やぶちゃん注:「桃の實」「桃仁」(とうにん)の生薬として知られ、主として血液の停滞・下腹部の膨満して痛むものを治すとされる。
「伽羅」裸子植物門イチイ綱イチイ目イチイ科イチイ属イチイ変種キャラボク Taxus cuspidata var. nana 。最近公開した『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 伽羅木』を見られたい。]
○婦人龍王湯
當歸(たうき)・川芎(せんきゆう)・甘草・丁子(ちやうじ)・升麻(しやうま)・滑石(かつせき)・熟地(じゆくぢ)【半生(はんなま)半熟。】・石膏【熱灰蒸(ねつばいむし)。】・莪朮(がじゆつ)【酢製。】・黃苽(わうこ)・沈香(ぢんかう)・桂心・茯苓(ぶくりやう)・良姜(りやうきやう)、右、十四味、貳匁づつ、藿香(かくかう)・白芍藥(びやくしやくやく)【半白半赤。】・人參・大黃(だいわう)【半生半炒(はんいり)。】・縮沙(しゆくしや)、右、五味、三匁づつ、木香(もつかう)・薰陸(くんろく)・鬱金(うこん)・肉桂(につけい)・柴胡(さいこ)・黃芩(わうごん)、右、六味、四匁づつ、乳香【一匁。】・桔梗・蒲黃(ほかう)【半生半炒。】・半夏(はんげ)、右、三味。一刄づつ。
右、廿九味、安產の藥。
牛込原町・若松町御簱同心衆、今井利助殿、賣藥(ばいやく)、產にのぞんで、母の「ほぞ」のしたへ、はるときは、早速、生(うま)る也。若(もし)、「さか子」、生れかゝらば、其子の出(いだ)したる足を、「左か、右か。」と見定(みさだめ)て、左の足を出したらば、母の左の手のうちへ、はるべし。早速、ほんのごとく生(うまる)るなり。又、後產(のちざん)、おりかぬるときは、其ひもをとらへ居(をり)て、此くすりを、はるときは、そのまゝ、「えな」等、とゞこほりなく、おりる也。千人に一人も、けが、なし。
產後、陰門のさけたるを治するには、
「ひともじ」を、手一束(てひとつかみ)に、きりて、蛤(はまぐり)を、せんじ、蛤と、「ひともじ」とを、ひとつに、せんじて、右二品を、「きぬ」の切(きれ)に、つつみ、たびたび、まへを、むす[やぶちゃん注:蒸し温める。]ときは、よく、なほるなり。
[やぶちゃん注:「婦人龍王湯」不詳。
「當歸」知られた生薬名。被子植物門双子葉植物綱セリ目セリ科シシウド属トウキ Angelica acutiloba の根。
「川芎」既出既注。底本の竹内利美氏の後注に、『センキュウ。セリ科の草木。その根茎が頭痛などの薬剤になる。薬用として栽培された』とある。当該ウィキによれば、『中国北部原産で秋に白い花をつけるセリ科の多年草センキュウCnidium officinaleの根茎を、通例、湯通しして乾燥したもので』、『本来は芎窮(きゅうきゅう)と呼ばれていたが、四川省のものが優良品であったため、この名称になったという。日本では主に北海道で栽培される。断面が淡黄色または黄褐色で、刺激性のある辛みと、セロリに似た強いにおいがある。主要成分としてリグスチリドなどがあげられる』。『現在の分析では鎮痙剤・鎮痛剤・鎮静剤としての効能が認められ、貧血や月経不順、冷え性、生理痛、頭痛などに処方されて』おり、『漢方では』「当帰芍薬散」に『配合され』、『婦人病』、所謂「血の道」の『薬として』、『よく用いられる』とあった。
「丁子」既出既注だが、再掲すると、クローブ(Clove)のこと。バラ亜綱フトモモ目フトモモ科フトモモ属チョウジノキ Syzygium aromaticum のこと。一般に知られた加工材のそれは、本種の蕾を乾燥したものを指し、漢方薬で芳香健胃剤として用いる生薬の一つを指し、肉料理等にもよく使用される香料である。
「升麻」同前で、漢方生薬。キンポウゲ目キンポウゲ科サラシナショウマ属サラシナショウマ Cimicifuga simplex の根茎を天日乾燥させたもの。ウィキの「サラシナショウマ」によれば、これは、『発汗、解熱、解毒、胃液・腸液の分泌を促して胃炎、腸炎、消化不良に効果があるとされ』、各種『漢方処方に配剤されている』とあり、さらに、『民間では』、一『日量』二『グラムの升麻を煎じて、うがいに用いられる』とする。さらに、『なお、本種に似たものや、混同されて生薬として用いられたものなど、幅広い植物にショウマの名が用いられている』とある。最後の部分は、ウィキの「ショウマ(植物の名)」も参照されたい。
「滑石」同前で、(かっせき)は、珪酸塩鉱物の一種で、フィロケイ酸塩鉱物(Phyllosilicates)に分類される鉱物、或いは、この鉱物を主成分とする岩石の名称。世界的には「タルク(talc:英語)」のほか、「ステアタイト」(Steatite:凍石)・「ソープストーン」(Soapstone:石鹸石)・「フレンチ・チョーク」(French chalk)・「ラバ」(Lava:原義は「溶岩」。本鉱石は変成岩である)とも呼ばれる。Mg3Si4O10(OH)2。水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物で、粘土鉱物の一種(当該ウィキ他に拠った)。
「熟地」キク亜綱ゴマノハグサ目ゴマノハグサ科アカヤジオウ属アカヤジオウ Rehmannia glutinosa の根。当該ウィキによれば、『陰干ししてできる生地黄(しょうじおう)、生地黄を天日干ししてできる乾地黄(かんじおう)と呼ばれるものと、生地黄を酒と共に蒸してできる熟地黄(じゅくじおう)と呼ばれるものがある。一般的に地黄と呼ばれるものは乾地黄を指すことが多い。五味は甘、苦。甘味は生地黄、乾地黄、熟地黄の順に強くなる。性は寒。但し熟地黄は寒性よりも酒の効果により温性に近い。地黄は単体として使われることよりも調剤生薬として』、知られた漢方薬に『使われる事が多い』。『内服薬として利用した場合、補血・強壮・止血の作用が期待できる。外用では腫れものの熱をとり、肉芽形成作用がある』とあった。
「莪朮」単子葉植物綱ショウガ目ショウガ科ウコン属ガジュツ Curcuma zedoaria 。当該ウィキによれば、『根茎が生薬(日本薬局方に収録)として用いられ、芳香健胃作用がある』。『ウコン』(ここに「鬱金」と出る、ウコン属ウコン Curcuma longa 。熱帯アジア原産であるが、十五世紀初めから十六世紀後半の間に、沖縄に持ち込まれ、九州・沖縄地方や薬草園で薬用(根)及び観葉植物として栽培された)『よりも薬効は強いとされる。生薬としては莪朮というが』、『中国では塊根を鬱金(ウコン、キョウオウと同じ)、根茎を蓬莪朮という』とある。
「黃苽」不詳。或いは、黄緑色を呈する、単子葉植物綱イネ目イネ科エールハルタ亜科 Ehrhartoideae Oryzeae族マコモ属マコモ Zizania latifolia の雄花か。
「沈香」双子葉植物綱アオイ(葵)目ジンチョウゲ(沈丁花)科ジンコウ(沈香)属ジンコウAquilaria agallocha 。詳しくはウィキの「沈香」を見られたい。最近、公開した『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 沈香』も参考になろう。
「桂心」最近、公開した『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 肉桂』を参照されたい。
「茯苓」既出既注だが、再掲しておくと、菌界担子菌門真正担子菌綱ヒダナシタケ目サルノコシカケ科ウォルフィポリア属マツホド Wolfiporia extensa の漢方名。中国では食用としても好まれる。詳しくは「三州奇談卷之二 切通の茯苓」の私の冒頭注を参照されたい。
「良姜」ショウガ目ショウガ科ハナミョウガ属 Alpinia の根茎を乾したもの。なお、この漢字表記は本邦での表記。
「藿香」「かはみどり」と読めば、薄荷の匂いのするシソ目シソ科カワミドリ属カワミドリAgastache rugosa がある。当該ウィキによれば、『葉や茎は漢方に用いられる』。『乾燥した葉に芳香があり、生薬名に藿香(かっこう)を当てているが、これは誤りで、日本では排香草ともいう』。『かぜ薬などの漢方薬として、茎、葉、根を乾燥させたものを用いる』。『民間では』、六~七月に、『茎の上部だけを切り取り、水洗いしたあとに吊るして陰干ししたものを、解熱薬として、また健胃薬として用いられる』とある。
「白芍藥」ユキノシタ目ボタン科ボタン属シャクヤク Paeonia lactiflora 或いは近縁種の根から製した生薬のうち、根の外皮を取り除いた乾燥させたものを指す。消炎・鎮痛・抗菌・止血・抗痙攣作用を有する。皮を残したものは「赤芍」(せきしゃく)と呼ぶ。
「大黃」既出既注。タデ目タデ科ダイオウ属 Rheum の根茎の外皮をり去って乾燥したもので、健胃剤・潟下剤とする。「唐大黄」と「朝鮮大黄」との種別がある(底本の竹内利美氏の後注に一部を拠った)。
「縮沙」ショウガ科アモムム属シュクシャAmomum villosum var. xanthioides の種子の塊を石灰を用いて乾燥させたもの。健胃・整腸作用がある。
「木香」キク目キク科トウヒレン属モッコウ Saussurea costus 又は Saussurea lappa の孰れかの根から採れる生薬。薫香原料として知られ、漢方では芳香性健胃剤として使用されるほか、婦人病・精神神経系処方の漢方薬に多く配合されている。
「薰陸」二種あるが、ここは「出羽」から、松・杉の樹脂が地中に埋もれ固まって生じた化石で、琥珀に似るが、琥珀酸を含まない。粉末にして薫香とする。岩手県久慈市に産するそれであろう。
「肉桂」先の「譚海 卷の七 江戶源兵衞店水戶家藏屋敷肉桂の事」を参照されたい。最近、公開した『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 肉桂』がよいのだが、漢語の「肉桂」と本邦の「肉桂」が種が全く異なるので、注は迂遠に長い。それに辛抱出来る方は、そちらの方が、いい。
「柴胡」セリ目セリ科ミシマサイコ属(或いはホタルサイコ属)ミシマサイコ Bupleurum stenophyllum の根。解熱・鎮痛作用があり、多くの著名な漢方方剤に配合されている。
「黃芩」キク亜綱シソ目シソ科タツナミソウ属コガネバナ Scutellaria baicalensis の根の周皮を取り除き、乾燥させたもの。当該ウィキによれば、『主要成分はフラボノイドのバイカリンやオウゴニンなど』で、『薬味としては』、『比較的よく』、『使われている』。『漢方では清熱薬に属し、小柴胡湯や柴胡加竜骨牡蛎湯など柴胡剤に分類される漢方処方群に配合されている』と記す一方で、『副作用』を項として掲げ、注意喚起がなされてある。
「乳香」既出既注。インド・イランなどに産する樹の脂(やに)の一種で、盛夏に砂上に流れ出でて固まり、石のようになったものを指し、香料・薬用とする「薫陸香」(くんりくこう:呉音で「くんろく(っ)こう」とも読み、「くろく」「なんばんまつやに」などとも呼ばれる。その中で乳頭状の形状を有するものを特に「乳香」と称し、狭義にはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属 Boswelliaの常緑高木から採取されるそれを指すとされる。
「蒲黃」現代仮名遣は「ほこう」。単子葉植物綱イネ目ガマ科ガマ属 Typha の花粉。薬用。
「半夏」単子葉植物綱ヤシ亜綱サトイモ目サトイモ科ハンゲ属カラスビシャク Pinellia ternata のコルク層を除いた塊茎。嘔気や嘔吐によく使われる生薬である。私の「耳囊 卷之七 咳の藥の事」も参照されたい。
「今井利助」不詳。
「後產」胎児を分娩した後、胎盤などが排出されること。「あとざん」「のちのこと」「のちのもの」等とも呼ぶ。]
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