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2024/05/31

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 烏藥

 

Uyaku

 

うやく  旁其 鰟𩶆

     矮樟

烏藥  【其氣似樟故名】

 

ウヽ ヨツ

 

本綱烏藥木似茶檟髙五七尺葉微圓而尖其狀似鰟𩶆

鯽魚而靣青背白有紋四五月開細花黃白色六月結實

其子如冬青生青熟紫核殻極薄其仁香而苦根如芍藥

嫩者肉白老者肉褐色如車轂紋形如連珠者佳其根葉

亦有香氣然根有二種嶺南者黑褐色而堅硬天台者白

而虛軟世稱天台之產爲勝今比之洪州𢖍州者天台香

味爲劣入藥功効亦不及

根【辛温】 散諸氣故入中風中氣藥婦人血氣小兒腹中

 諸蟲除一切冷氣治霍亂反胃吐食瀉痢其功不可悉

 載猫犬百病並可磨服

△按鳥藥能雖治鳥獸之病而烏藥之烏非鴉烏之烏以

鳥《✕→烏》褐色名之耳凡堅而直者不佳俗稱久久利者良

 

   *

 

うやく  旁其《ばうき》 鰟𩶆《はうひ》

     矮樟《わいしやう》

烏藥  【其の氣(かざ)、「樟(たぶ)」に似、

      故に名づく。】

 

ウヽ ヨツ

 

「本綱」に曰はく、『烏藥は、木、「茶檟(ちさ)」に似て、髙さ、五、七尺。葉、微《やや》圓《まどか》にして、尖り、其の狀《かたち》、「鰟𩶆」・「鯽魚(ふな)」に似て、靣《おもて》、青く、背《うら》、白く、紋、有り。四、五月、細《こまやか》なる花、開く。黃白色。六月、實を結び、其の子《たね》、「冬青(まさき)」のごとく、生《わかき》は、青く、熟≪せば≫、紫なり。核《たね》≪の≫殻、極めて、薄し。其の仁《じん/さね》、香《かをり》して、苦《にが》し。根、「芍藥」のごとく、嫩(わか)き者、肉、白。老ひ子は[やぶちゃん注:「子」(たね)は送り仮名にある。]、肉、褐色にして、車《くるま》の轂(くるゝ《✕→こしき》)の紋のごとし。形、連珠のごとき者、佳なり。其の根も、葉も、亦、香氣、有り。然《しか》るに、根に、二種、有り。嶺南の者は、黑褐色にして、堅-硬(かた)く、天台の者は、白くして、虛-軟(やはら)かなり。世に、「稱天台の產、勝(すぐ)れり。」と爲《な》す。今、「之れを、洪州・𢖍州(こうしう)の者に比すれば、天台の香味《かうみ》、劣れり。」と爲す。藥に入れて功-効《こうこう》も亦、及ばず。』≪と≫。

『根【辛、温。】 諸氣を散ずる故、中風《ちゆうぶ》・中氣の藥、婦人≪の≫血氣、小兒≪の≫腹中≪の≫諸蟲に入るる。一切の冷氣を除き、霍亂・反胃・吐食・瀉痢を治す。其の功、悉く載すべからず。猫・犬の百病、並びに、磨(す)りて、服(の)ますべし。』≪と≫。

△按ずるに、鳥藥、能く鳥獸の病ひを治すと雖も、「烏藥」の「烏」は、非「鴉-烏《からす》」の「烏」に非ず。「『烏』褐(くろちや)色」なるを以つて、之れを名づくのみ。凡そ堅くして直《すぐ》なる者、佳《よ》からず。俗、「久久利《くくり》」と稱する者、良し。

 

[やぶちゃん注:「烏藥」とは、現行の漢方の基原植物としては、

クスノキ目クスノキ科クロモジ属テンダイウヤク Lindera aggregata

である。小学館「日本大百科全書」によれば、『クスノキ科』Lauraceae『の常緑低木』で、『原産は中国中南部、台湾であるが、江戸時代に薬用として輸入したため、現在では九州のほか、和歌山県、大阪府、静岡県などでも野生化している。光のよく当たる環境を好み、高いものでは』五『メートルに達する。葉は互生し、広楕円(こうだえん)形で』、『先は急に細くなって尾状となり、長さ』三~八『センチメートル、幅』一・五~五『センチメートルで全縁』(葉の縁が滑らかでギザギザのないこと。「全辺」とも言う。)、『基部は円形あるいは広い』楔(くさび)『形をなし、革質で明瞭』『な三行脈がある。若葉のときは長い褐色の軟毛を密生するが、のちに上面は無毛となって光沢をもち、下面は灰白色で毛がある』。三~四『月に散形花序を腋生(えきせい)し、鱗片』『状の包(ほう)の中から長さ』二~五『ミリメートルの短毛を密生した花柄を出し、黄緑色の花を開く。雌雄異株で、雄花には雄しべ』九『個、雌花には雌しべ』一『個のほか、多くの退化雄しべがある。花被(かひ)』(萼と花弁の総称)『は』六『個。核果は楕円形で、初め』、『緑色であるが、成熟すると黒くなる。根は数珠』『状に長く肥大して硬く、外面は暗褐色を呈する。根を乾燥したものを漢方では』「烏薬」『(うやく)と称し、精油を含有するので、鎮痛、興奮、健胃剤として、腹痛、胸痛、消化不良などの治療に用いる。なお、テンダイウヤクの名のおこりは、中国の浙江』『省の天台山に産する烏薬が良品であるところから天台の二字をつけたものである』とある。リンク先に二枚画像がある。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十四」の「木之一」「香木類」の「烏藥」の独立項で(「漢籍リポジトリ」)、[083-42b]から始まる。 その内容のパッチワークである。

「樟(たぶ)」例によって、日中で指示する種が異なる。既出項の「樟」、及び、「烏樟」を、必ず、参照されたい。

「茶檟(ちさ)」所謂、「茶」、ツツジ目ツバキ科ツバキ属チャノキ Camellia sinensis

「鰟𩶆」条鰭綱骨鰾上目コイ目コイ科タナゴ亜科タナゴ属 Acheilognathus ・バラタナゴ属 Rhodeus に属する淡水魚の種群を包括して指す語。無論、比喩で、テンダイウヤクの葉の形がそれらの魚の体型に似ていると言っているのである。

「鯽魚(ふな)」コイ科コイ亜科フナ属 Carassius の種群を指す。同前の比喩。

「冬青(まさき)」バラ亜綱ニシキギ目モチノキ科モチノキ属ソヨゴ Ilex pedunculosa当該ウィキによれば、『和名ソヨゴは、風に戦(そよ)いで葉が特徴的な音を立てる様が由来とされ、「戦」と表記される。常緑樹で冬でも葉が青々と茂っていることから「冬青」の表記も見られる』。但し、『「冬青」は常緑樹全般にあてはまることから、これを区別するために「具柄冬青」とも表記される。中国植物名でも、具柄冬青(刻脈冬青)と表記される』とある。なお、東洋文庫訳では、割注で『(灌木類。ナナメノキ)』とする。この「ナナメノキ」は、モチノキ目モチノキ科モチノキ属モチノキ亜属ナナミノキ Ilex chinensis の異名で、中文ウィキの「冬青属」相当では、確かに狭義の「冬青」をナナミノキに宛ててはある。となれば、厳密には現代では、日中で同属異種ということになるが、明代に、それを確然と区別していたとは、私には思われないので、これ以上、ディグはしない。

「仁《じん/さね》」「さね」は東洋文庫訳のもの。

「芍藥」ユキノシタ目ボタン科ボタン属シャクヤク Paeonia lactiflora 、或いは、その近縁種も含む。

「車《くるま》の轂(くるゝ《✕→こしき》)」良安に訓読の誤り。この「くるゝ」の誤りは、経過的には、良安の評の最後に出る『俗、「久久利《くくり》」と稱する者』の呼称(ソヨゴの異名或いは方言としては、生き残っていないようである)にうっかり引かれてしまった誤記が発端かと思う。一方で、物理的構造的に彼が想起したのは、扉の回転軸部分を言う「くるる」=「樞」(枢:「とぼそ」とも言う)で、これは、荷車の「轂」=「こしき」=「車輪の軸を受ける部分」のそれを、錯誤したものと考えるものである。

「嶺南」現在の広東省・広西省。

「黑褐色にして、堅-硬(かた)く」ウィキの「ソヨゴ」によれば、同属のモチノキ属クロソヨゴ Ilex sugerokii は、『やはり長い柄を持つ果実をつけ、葉の形などもやや似ているが、葉に鋸歯があり、全体にやや小さい。枝が黒っぽい』とあるので、それかと思ったが、調べてみると、これは本邦の本州(山梨以西)・四国産で、中国には自生しないようであるから違う。その近縁種か。

「洪州」現在の江西省。

「𢖍州(こうしう)」(「𢖍」は「衡」の異体字)湖南省。

「中風」脳血管障害の後遺症である半身不随・片麻痺・言語障害、及び、手足の痺れや麻痺などを指す症状の総称。

「中氣」(惡氣に中(あた)る)で、「中風」に同じ。]

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