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2024/05/27

譚 海 卷之十五 諸病妙藥聞書(16)

○「葛花解醒湯(かつくわかいせいたう)」。

 白豆蒄(びやくづく)・縮沙・葛花【各五分。】・茯苓・陳皮・猪苓(ちよれい)・人參【各一匁護五分。但(ただし)、人參は砂參(ささん)にかへても、よし。】・白朮・神麹・澤潟・乾姜【各二分。】・靑皮【三匁。】・木香【五分。】

 已上、十三味、葛花は一匁入(いる)るも、よし。

[やぶちゃん注:上手く分離させることを忘れてしまっていた。以降、「四味平胃散」までは、前回「(15)」の後ろから二つ目の、「食傷せし時は」の連投である。なお、既に述べた通り、既注の生薬注は、基本、繰り返さない。

「葛花解醒湯」漢方方剤サイト「イアトリズム」のこちらの「処方構成」を参照されたい。「適応疾患および対象症状」の項に、『二日酔い、呑み過ぎ、嘔吐、頭痛、落ち着かない、みぞおちのつかえ、手足の震え、食欲不振、尿量減少』とある。]

 

○「萬病感應丸(まんびやうかんのうぐわん)」。

 此くすり、解毒・氣付・癰庁(ようちやう)、毒蟲にさゝれたる牛馬にも、用(もちい)て、よし。賣所(うりどころ)、下谷上野、屛風阪前町(まへちやう)にて尋(たづぬ)べし。價(あたひ)、しれず。

[やぶちゃん注:「萬病感應丸」「大正製薬株式会社」公式サイト内の「萬病感應丸A」を見られたい。

「下谷上野、屛風阪前町」いつもお世話になるサイト「江戸町巡り」に「【下谷②】屏風坂下車坂町」があり、現在の『台東区上野七丁目』とある。ここ(上野駅周辺)の内か、接した周縁であろう(グーグル・マップ・データ)。]

 

○「奇應丸」。

 沈香【五戔。】・人參【一兩。】・熊膽・麝香【各半兩。】・金箔【三十六枚。】・白檀【三匁】

 已上、六味。

[やぶちゃん注:「小児薬樋屋奇応丸」のページを見られたい。但し、そこでは微妙に添加物が異なる。]

 

○「梅木和中散(うめのきわちゆうさん)」。

 當歸・桔梗【三匁八分。】・白朮【三匁。】・胡黃蓮【二分。】・乾姜・陳皮・茯苓・香附子・益母(やくも)【各二匁五分。】・甘草【七分。】

 已上、十味。

[やぶちゃん注:「梅木和中散」「和中散」は江戸時代の家庭用漢方薬として有名。枇杷葉(びわよう)・桂枝・辰砂・木香・甘草などを調合した粉薬。暑気あたり・めまい・風邪などに服用(「デジタル大辞泉」に拠った)。「梅木和中散」は滋賀県栗東市六地蔵にあった「旧和中散本舗 大⻆家住宅」(グーグル・マップ・データ)が販売元。ここは旧「梅の木村」であった。

「益母」野原・道端などに生えて、高さ一メートル前後になり、夏に紫色の花を咲かせるシソ目シソ科オドリコソウ亜科メハジキ属メハジキ Leonurus japonicus は「目弾き」だが、別名を「益母草」(やくもそう)とも言う。当該ウィキによれば、『全草が産前産後、婦人病、眼病などの薬草として利用されていた』とあり、より詳しく、『花の時期の全草を採取し乾燥させたものを、漢方で産前産後の保健薬にしたことから、益母草(やくもそう)と称し』、『種子は茺蔚子(じゅういし)と称する生薬になる』。『初夏の開花始めのときに地上部を刈り取って、屋内で風干しして、長さ』二センチメートル『ぐらいに刻んで調製し、紙袋で貯蔵される』。『全草(益母草)は、止血、浄血、婦人病薬としての補精、浴湯料として薬効があるとされ、種子(茺蔚子)は水腫、目の疾患、利尿に効果があるとされる』。『全草、種子ともに婦人の要薬、特に産後の止血、浄血、補精、月経不順、腹痛に効用があるといわれている』とあった。なお、「目弾き」は茎を使った子どもの遊びに由来するが、私は、この遊びを知らなかった。「グーグル画像」で「目はじき 遊び」で見て、びっくりした。ウィキでは瞼につっかえ棒にしたとあるが(画像にも絵はある)、一寸危ないから、このびっくらの方が安心かな。]

 

○「四味平胃散」。

 陳皮・蒼朮・厚朴(こうぼく)【各等分。】・甘草【少。】

 此(この)「平胃散」、粉ぐすりにて、たくはひ置(おき)、すこしの腹痛には、用(もちい)て、功、有(あり)。

[やぶちゃん注:「四味平胃散」「日経DI」の「平胃散」を見られたい。但し、その解説では「四味」ではなく、「六味」である。]

 

○「きのこ」に、あたりたるには、

 「さくら」の皮を、せんじ、飮(のむ)べし。

 

○又、一方。

 きくめい石・「いわう」、右、二味を飮(のみ)て、妙也。

[やぶちゃん注:「きくめい石」「菊銘石」で代表的な造礁サンゴの一つで塊状或いは半球状の群体を造る刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目キクメイシ科Faviidae の珊瑚を指す。これを生薬剤としたのは本邦独自の「和方」のようである。「くすりの博物館」公式サイト内の「もうひとつの学芸員室」の「学芸員のちょっとコラム」で稲垣裕美氏が書かれた「女性が売り歩いた薬 越後の毒消し」の解説に、『毒消しという名前であるが、いわゆる有毒物の解毒や中毒の際に使う薬ではなく、気持ちが悪い時や食あたりの際に用いた薬である』とされ、『配合されている菊名石は菊目石、菊銘石、菊明石とも書くが、鉱物ではなく、イシサンゴの一種である。江戸時代の製薬家・遠藤元理がその著書』「本草弁疑」の中で、『菊目石を中国にはないと紹介している。生息地は紀州などの温暖な海で、新潟の海には産出しない。原料は大阪から仕入れていたと伝わる』とあり、さらに、『菊名石を用いた丸薬には、京都山科の有名売薬「金屑丸(きんせつがん)」があった。寺島良安著』「和漢三才図会」の『「菊銘石」の項には、金屑丸は食傷解毒の薬で、菊銘石は「酸ニ浸シ研末」、すなわち粉末とし、硫黄と合わせて金箔をかけた丸薬にしたとされる。そのルーツは、寺院同士のつながりで京都の金屑丸が北陸の寺院へと伝わったとも、当時普及した医学書』「袖珍医便」に『記載の処方を参考にしたのではないかともいわれている』とあった。また、ここに挙げられている「いわう」についても、『硫黄は内服としては下痢などに用いる』とあった。]

 

○魚毒にあたりたるには、

 「かんらん」を、のみて、よし。「あんかう」のはりにさゝれ、いたむには、「かんらん」を、かみて、つくれば、いたみ、とまる也。

[やぶちゃん注:「かんらん」底本では、編者による右傍注に『(橄欖)』とある。既注だが、再掲しておくと、ムクロジ目カンラン科カンラン属 カンラン  Canarium album ウィキの「カンラン科」によれば、『インドシナの原産で、江戸時代に日本に渡来し、種子島などで栽培され、果実を生食に、また、タネも食用にしたり油を搾ったりする。それらの利用法がオリーブ』(シソ目モクセイ科オリーブ属オリーブ Olea europaea )『に似ているため、オリーブのことを漢字で「橄欖」と当てることがあるが、全く別科の植物である。これは幕末に同じものだと間違って認識され、誤訳が定着してしまったものである』とある。

『「あんかう」のはりにさゝれ』毒腺はないが、アンコウ類の頭部上部には棘があり、「魚食普及センター」の「深海魚のアンコウってどんな魚? 泳いでいる姿もチェック!」に「吊るし切り?なんでわざわざ吊るす?」があり、そこに『ヌルヌルしていて柔らかいので』、『さばきにくく、頭がゴツゴツしていてトゲもあるので、まな板でさばくときに非常に痛い』。『そのため、硬い顎をひっかけて吊るして、水を入れて膨らませてさばくとさばきやすくなる』とあった。]

 

○又、一方。

 「するめ」を、せんじて、その湯をのむべし。「かつを」に醉(ゑひ)たるにも、よし。食傷にも、よし。

 

○河豚魚(ふぐ)にあたりたるには、

 紺屋(こうや)の藍(あゐ)を、少し、飮(のみ)て、よし。

[やぶちゃん注:フグ毒テトロドトキシン tetrodotoxinTTXC11H17N3O8:真正細菌ドメイン Bacteriaプロテオバクテリア門Proteobacteriaガンマプロテオバクテリア綱Gammaproteobacteriaビブリオ目 Vibrionalesビブリオ科ビブリオ属 Vibrioやガンマプロテオバクテリア綱シュードモナス目Pseudomonadalesシュードモナス科シュードモナス属 Pseudomonas などの一部の真正細菌由来のアルカロイド)には、現在も解毒剤は、ない。]

 

○「きつけ」には、

 「奇應丸」・「萬病感應丸」・佐竹家の製、「混元丹」、よし。

[やぶちゃん注:「混元丹」小学館「日本国語大辞典」に、『漢方薬の一種。練薬で水または湯で溶いて飲用するもの。健胃、強心、解毒などの効能があるという』とあって、室町中期の文明本の「節用集」の中に既に記載がある、とある。金沢で現在でも複数の漢方薬店の伝統薬として売られている。]

 

○「らうがい」には、

 烏骨雞(うこつけい)の玉子を、「みそ汁」に、くふべし。又、「獺肝丸」、よし。

[やぶちゃん注:底本では『烏骨、雞の玉子を』となっているが、「烏骨」という漢方生剤はないから、かく、した。

「らうがい」「勞咳」。結核の古称。

「烏骨雞」鶏(キジ目キジ科キジ亜科ヤケイ(野鶏)属セキショクヤケイ亜種ニワトリGallus gallus domesticus )の品種の一つであるウコッケイGallus gallus var.domesticus 。東南アジア原産で、江戸時代に中国経由で日本に入ってきた鶏が定着したもの。現在は国天然記念物で日本農林規格の指定在来種である。]

 

○氣鬱の藥。

 右、疝氣の所に、藥方、出(いで)たり。せんき・氣うつ・腎虛に、よし。

[やぶちゃん注:「諸病妙藥聞書(8)」の三番目の『○疝氣の藥』を参照。]

 

○精氣を增し、息才にする方【名「神祕固精丹」。】。

 雞卵三つ・本玉(ほんだま)黑砂糖廿目・上々古酒一合

 黑砂糖は、ばらばらする品を用(もちゆ)べし。右、三味、玉子に和し、其後(そののち)、毛水能(けすいのう)にて、砂糖の塵(ちり)を、こし取(とり)、扨(さて)、土鍋にても、銅鍋にても、ひとつに入(いれ)、ゆるき火にて、ねり、つめる也。ねり、かたまるまでは、「せつかい」のやう成(なる)物にて、少(すこし)も、手を、ゆるめず、かきまはし、かきまはし、せんじつめ、かたまりたる時、火より、鍋を、おろし、さまして、東京肉桂(トンキンにくけい)【五戔。】・乾姜・兎綠子・杜仲【各二匁五分。】牛膝【一匁八分。】、右、五味、細末にしたるを、ねりまぜ、丹藥となし、朝暮(てうぼ)、用ゆべし。

[やぶちゃん注:「神祕固精丹」この名はネットでは掛かってこない。

「本玉」「真正の」の意。

「毛水能」「毛水囊」が正しい。音変化で「けすいの」「けずいの」とも言う。馬の尾の毛で底を編んだ、目の極めて細かい篩(ふるい)を言う語。]

 

○「しやく」の藥

 『頭痛を治する方、肩の「はり」にも、よし。』と、有(ある)所に出(いで)たり。

[やぶちゃん注:「しやく」「癪」。胸や腹が急に痙攣を起こして痛むこと。「さしこみ」。]

 

○又、一方【名「白朮散」。】。

 人參・白朮・茯苓・藿香・木香・葛根(かつこん)・甘草【少。】

 常には、人參を、はぶきて用(もち)ふ。

 

○「しやく」の根を切る藥。

 「麻(あさ)がら」を黑燒にして、每朝、「さゆ」にて、空腹に用(もち)ゆ。

 癪の張藥(はりぐすり)。

 楊梅皮末・胡椒末・蕎麥粉

 右、目形(めかた)、等分にして、酢に、とき、めし粘(のり)にて、紙に付(つけ)て、胸に、はるべし。夫(それ)より、胸へ、差込(さしこむ)事、なし。但(ただし)、此粉、平は別々に包(つつみ)て貯(たくはふ)べし。ひとつに包置(つつみおく)時は、用(もちい)て、功、なし。

 癪の藥。

 「疝癪散」、新橋加賀町(かがちやう)の賣藥、「せんき」の所にあり。

[やぶちゃん注:「疝癪散」不詳。

「新橋加賀町」現在の中央区銀座七丁目(グーグル・マップ・データ)。

『「せんき」の所』「諸病妙藥聞書(8)」の「せんき」を指す。]

 

○癪のまじなひ。

 五月五日宵より、精進して、朝、起(おき)て、菖蒲(しやうぶ)を、一本、手に握(にぎり)て、其長(そのたけ)に、後先(あとさき)を切(きり)すて、其せうぶを、紙に、よく封(ふうじ)、只(ただ)、「大切の守成(まもりなる)」由(よし)を、いひて、癪有(ある)人の胸に常に當(あて)させ置(おく)べし、癪の根を切る事、妙也。

 

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