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2024/05/14

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 奇楠

 

Kyara_20240514150501

 

きやら  奇南 琪楠

     奇藍

奇楠 伽羅【今專稱之也】

     伽羅者梵語阿

     伽嚧香之畧乎

本草彙言曰奇南香原屬沉香同類因樹分牝牡則陰陽

形質臭味情性各各差別其沉香爲牝【陰也味苦】陰體而陽用

奇南爲牡【陽也味辛】

陳眉公秘笈云奇南出於占城在一山首長禁民不得𥞪

取犯者斷其手彼亦貴重

△按伽罹乃香木至寳者和漢同貴之然本草綱目不詳

 辨之何耶葢深《✕→沉》水香中撰出之換名稱奇楠奇藍等乎

 【楠藍字義不可拘分牝牡亦不然沉水香卽奇楠也】萬安沈香一片價萬錢者則

 可知古者伽羅與沉香不別也其出𠙚亦與沈香同交

 趾暹羅占城也凡伽羅脂潤柔靭味微辛者佳也不潤

 或帶白色味微甘者不佳伹其香氣美悪以言不可論

 耳大抵交趾之產最上暹羅者次之占城又次之和州

 東大寺名香有二種一名黃熟香【俗云蘭奢待有重三貫三百目】一名

 大紅塵【有重四貫六百目云】天竺漸名香鮮殊大者希也

 

   *

 

きやら  奇南 琪楠《きなん》

     奇藍

奇楠 伽羅《きやら》【今、專ら、之れを稱すなり。】

     「伽羅」とは、梵語なり。

     「阿伽嚧香《アカロかう》」の畧か。

「本草彙言《ほんざうゐげん》」に曰はく、『奇南香(きやら《かう》)は、原(もと)、「沉香」の同類に屬す。樹に因つて、牝《めす》・牡《をす》を分《わか》ち、則ち、陰・陽、形質・臭味・情性、各各《おのおの》の差別あり。其れ、「沉香」は、牝と爲《な》す【陰なり。味、苦。】。陰の體《たい》にして陽の用なり。「奇南」、牡と爲す【陽なり。味、辛。】。』≪と≫。

陳眉公≪の≫「秘笈《ひきふ》」に云はく、『「奇南」は、占城《チヤンパ》より出づ。一山《いつさん》、首長、在りて、民に禁じ、𥞪《み》[やぶちゃん注:「實」に同じ。]を取ること、得ず。犯す者は、其の手を斷《き》る。彼《か》の地にも[やぶちゃん字注:「地」は訓点にある。]、亦、貴-重(たか)し。

△按ずるに、「伽羅」の香木の至寳なる者、和漢、同じく、之れを貴とす。然《しか》るに、「本草綱目」に、詳かに、之れを辨ぜざるは、何ぞや。葢し、「沉水香」の中《うち》、之れを撰出《えらびいだし》、名を換(か)へて「奇楠」・「奇藍」等と稱するか【「楠」・「藍」の字義に拘るべからず。牝・牡を分≪わかつ≫、亦、然らず。「沉水香」、卽ち、「奇楠」なり。】萬安の「沈香」、一片、價(あたひ)、萬錢と云ふ時は[やぶちゃん字注:「云」と「時」は訓点にある。]、則ち、知るべし。古者(いにしへ)は、「伽羅」と「沉香」、別(わか)たざるなり。其の出𠙚も亦、「沈香」と同じく、交趾《カウチ》・暹羅《シヤム》・占城《チヤンパン[やぶちゃん字注:ママ。]》なり。凡そ、「伽羅」は、脂《あぶら》、潤ひ、柔-靭(しなへ)にして、味、微辛の者、佳なり。潤≪はず≫、或ひは、白色を帶びて、味、微甘の者、佳ならず。伹し、其の香氣の美悪《よしあし》、言《げん》を以つて、論ずべからざるのみ。大抵、交趾の產、最上なり。暹羅の者、之れに次ぐ。占城、又、之れに次ぐ。和州、東大寺に、名香、二種、有り。一つは、「黃熟香」と名づく【俗に「蘭奢待(らん《じやたい》)」と云ふ。重さ、三貫三百目、有り。】。一つは、「大紅塵」と名づく【重さ、四貫六百目、有りと云ふ。】。天竺にも、漸(ぜんぜん)に、名香、鮮(すくな)く、殊に大なる者、希《まれ》なり。

 

[やぶちゃん注:この「奇楠」「奇南」は、先に出た「伽羅木」とは全く違う、熱帯アジア原産の、

ジンチョウゲ科ジンコウ属ジンコウ Aquilaria agallocha

であるので、注意が必要であるが、良安が特異的に「本草綱目」を批判して、疑問を提示している(これは私が電子化注した水族の部や他の動物類等では、まず見られないことである。これは、良安が医師であり、漢方生薬について、特に植物基原のものには、同寺の一家言があるからに他ならない)通り、これは、実は、前の「沈香」と同一種である。従って、そちらの私の注を見られたい。また、小学館「日本国語大辞典」の「きやら」(伽羅)を引くと、『沈香の優良品』で、『香木中の至宝とされる』とある。

「阿伽嚧香《アカロかう》」小学館「デジタル大辞泉」の「伽羅」の冒頭にサンスクリット語「kālāguru」の音写「伽羅阿伽嚧」の略。また、「tagara」の音写「多伽羅」の略ともする、とあった。東洋文庫訳では、「伽」に右訂正傍注で『(迦)』としてあるが、わけ判らんちんやで?

「本草彙言」明の倪朱謨(げいしゅばく)の撰になる本草書。全二十巻であるが、現存は十五巻のみ。順治二 (一六四五)年の序がある。国立国会図書館の「次世代デジタルライブラリー」で検索したところ、ここが当該部である(マーキングがある)。まさに「沈香」の一節である。

『陳眉公≪の≫「秘笈《ひきふ》」』は『尚白斎鐫(せん)陳眉公訂正秘笈』で、これは、明の陳繼儒の撰になる叢書の名。

「占城《チヤンパ》」既出既注だが、再掲しておくと、現在のベトナム中部に存在したチャム族の国家。中文の「抖音百科」の「占城」の地図を参照されたい。

「交趾《カウチ》」既出既注だが、再掲しておく。コーチ。「跤趾」「川内」「河内」とも漢字表記した。元来は、インドシナ半島のベトナムを指す中国名の一つ。漢代の郡名に由来し、明代まで用いられた。近世日本では、ヨーロッパ人の「コーチ(ン)シナ」という呼称用法に引かれて、当時のベトナム中部・南部(「広南」「クイナム」等とも呼んだ)を、しばしば、「交趾」と呼んだ(どこかの自民党の糞老害政治家石原某は今も使っている)。南シナ海の要衝の地で、朱印船やポルトガル船・中国船が来航し、中部のホイアン(グーグル・マップ・データ。以下、無指示は同じ)などに日本町も栄えた(主文は山川出版社「山川 日本史小辞典」に拠った)。

「暹羅《シヤム》」既出既注だが、再掲しておく。タイの旧称。シャムロ。「暹」国と「羅」国が合併したので、かく漢字表記した。本邦では、私の世代ぐらいまでは、結合双生児を「シャム双生児」と呼んだが、これはサーカスの見世物のフリークスとして知られた胸部と腹部の中間付近で結合していた「チャン&エン・ブンカー兄弟」(Chang and Eng Bunker 二人とも一八一一年~一八七四年)が、たまたまシャム出身であることによった呼称であり、地域差別を助長する差別用語として死語にすべきものである。

『和州、東大寺に、名香、二種、有り。一つは、「黃熟香」と名づく【俗に「蘭奢待(らん《じやたい》)」と云ふ。重さ、三貫三百目、有り。】。一つは、「大紅塵」と名づく【重さ、四貫六百目、有りと云ふ。】』既出既注。当該ウィキを参照されたい。]

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